第3章 最初のお仕事
「あの人は任務の時もあんな感じですよね、兼さ・・・」
兼さんに言いながら主さんに目を戻すと、思わずハッとして、兼さんの顔を見る。
「兼さん・・・主さんのあれ、もしかして・・・」
和「あぁ・・・あぁ、そうだな・・・」
そう小さく言った兼さんも、驚きの顔をしていて。
だけど、その顔もすぐにいつもの兼さんに戻り、微かに口端を緩ませる。
和「まさかこんなところで、アレを見るとは思ってなかったぜ」
「そう、ですね・・・大丈夫でしょうか、主さん」
和「さぁな?けど、オレと手合わせした時の感じだと、そう簡単にはやられねぇだろ。そこはオレが保証してやる。それに、あの人と同じに構えるなら、ハッタリとしても使えんだろ」
さぁな?って、言いながらもどことなく楽しそうな表情を見せる兼さんに、僕は頷いた。
兼さんが大丈夫って太鼓判押したんなら、きっと主さんは・・・大丈夫なんだ。
それにあの構え方に変わってから、主さんは受けるだけではなく相応に剣技を返してもいるし、あとは時間の問題かな?
・・・なんて思ったのも束の間、漸く主さんが攻撃に入ると、相手の審神者が主さんの足を引っ掛けて尻もちをついた。
「なかなかの姿だな」
『そこまで卑怯とは!』
「卑怯とは人聞きの悪い。さっきも言ったではないか、ルール無用だと」
『チッ・・・女だからって随分とナメた真似を・・・だったらこっちも・・・』
え・・・な、なんかいま主さん、ちょっといつもと雰囲気が・・・違った?
ここから見ても分かるほど悔しそうな顔をして、ギュッと手元の砂を掴み、何度か迷うような素振りを見せながらも・・・その掴んだ砂を思い切り投げつけた。
『そぅら、目潰しだ!』
兼「ぅん?」
あっ・・・
兼さんも僕も、一瞬、時が止まったかのように目を見開く。
そして。
「「 えーっ?! 」」
僕や兼さん以上にみんなが驚いた声を上げる。
それはそうだろう、いくら元気いっぱいな主さんを見てきたと言っても、いまの主さんは兼さんのマネをしたんだから。
「目っ、目に砂が!こんな汚いやり方をして!」
『汚いやり方とは人聞きの悪い。斬り合いに作法無用なのでしょう?ほら・・・ほらっ!さっきの勢いはどうした!』
まともに見えていない相手に主さんは次々と刀を振り出す。
ホントに、兼さんみたいだ・・・