第3章 最初のお仕事
❀❀❀ 堀川国広side ❀❀❀
僕たちの主さんと、他の本丸の主が向き合うのを見守っていると、キンッと音を響かせた後に主さんが驚いた顔をしながら腕を押さえて地に膝を着いた。
乱「いち兄、あるじさん負けちゃったの?!」
一「決着はまだついていないようだから心配いらないよ、乱。ただ、あの様子からすると大丈夫とは言えないけどね」
一期一振は珍しくもやや険しい表情を浮かべながら、主さんの方へと視線を動かし、僕もまた、同じように視線を戻すと、押さえ込んでいる場所は少しずつ赤く染まっていく。
和「チッ・・・油断しやがって、バカが」
兼さん・・・
苦く呟いた兼さんは、いつになく心配そうな顔をして主さんを見据える。
薬「せめて傷の手当てだけでもさせて貰えたらとは思うが、あの感じだとムリだろうな。フッ・・・あんなに適当に縛って・・・帰ってからの処置が楽しみだ・・・」
一「 薬研。主には山姥切のように新薬を使ってはいけないよ」
真剣な顔で言う一期一振に、分かってると返事をするも・・・怪しいな、と思っているみんなに僕も心の中で同感する。
恐らく誰かが立ち会わなければ、薬研はイキイキと治療に専念するだろうから。
『では、お願い致します』
風に乗って届く主さんの言葉に、早く決着がつくといいのにと小さく息を吐く。
正直、刀傷は僕だって痛い。
いや、それは僕じゃなくても・・・きっと痛い。
任務で戦っているなら、傷を受けてもそれが終わるまでは痛いだなんて言ってられない場合もある。
それなのに主さんは、任務ではなく、ただ相手の戯れの為に体を張ってる。
違う、ただ戯れの為じゃない。
他の審神者から奪い取った刀剣男士たちを取り返す為と、僕たちを守る為・・・その為に体を張ってるんだ。
石「主はまたも、剣撃を受けているばかりだね」
みんな黙って見守りつつも、その沈黙に耐えかねたのか石切丸がそう言葉を発した。
次「まったく、アタシがさっきアドバイスしたってのに」
石「アドバイスって?」
僕も、それはどんなアドバイスなんだろうと耳を傾ければ、次郎太刀は得意気な顔で石切丸を見る。
主さんは打刀を手にしている。
なのに、大太刀の次郎太刀がするアドバイスって・・・
次「だからさ、刀なんて振り回しときゃ当たる!ってやつ」
やっぱりそれか・・・