第3章 最初のお仕事
出来るなら早く帰りたいし、早速お手合せをとは・・・思ったものの。
ガチで本物の刀はやっぱり重い・・・おじいちゃんが私に持たせてたのって、多少の軽量化をしてたやつなのか?
前に本丸の道場で持たせて貰った堀川さんの木刀は、私が使っていた物と比べるとそれなりに重かった。
それにいくら模造で刃を潰してあるとは言え、当たればきっと、いや絶対お互いに痛い。
鯰尾さんと乱さんの話だと、負けてしまった新米審神者さんたちは揃ってケガを負っていたって言ってたし。
『まぁ、なるようにしかならないかな。では・・・いざ』
ポツリと言いながら腰帯に備えた刀を抜き、とりあえずな感じで上段に構えて相手を見据える。
それは向こうも同じで、お互いの間を風がすり抜けた。
ジリ、と音を立て相手が先に動いて大きく刀を振り翳す。
・・・来る!
まず先にと動き出した相手から目を外すことなく、何度となく打ち込んで来る攻撃をただ受け続けてみる。
和泉守さんとのお手合わせの時は、打ち返すことは出来ないって分かってたから受け続けて、もし、隙があればなんて思ってたけど・・・今は違う。
長谷部さんに確認したら、審神者っていうのは人間だって聞いたから。
相手が長谷部さんたちの様な神様とも呼べる方々ではなく、私と同じ人間であるならば勝算がなくもない・・・と思うのは私だけかも知れないけど。
でも、多分。
この人の場合はただ力任せに刀を振り回しているだけだ。
攻撃は最大のなんとやら・・・とでも言うように、反撃をする隙を与えないかのように、ただ、打撃の回数が多いだけ。
あと、力任せに振り下ろしてる分、受け身の私も少しばかり押されてしまうけど・・・だけど、これくらいならおじいちゃんとの手合わせに比べたら全然何ともない。
むしろ、おじいちゃんの門下生の練習相手よりも楽だ。
って事は、この審神者・・・剣術に関しては初心者レベル?
それなのに勝ち続けているって、どういう事だろう?
もしかして他の新米審神者さんたちの負傷は、なにかカラクリでもあるとか?
でもそうだとしたら、どのタイミングで?
そう思った瞬間、一段と大きく振りかざされた刀がヒュッと音を立てて私を横から薙ぎ払う。
『危なかった・・・・・・え・・・』
間一髪で避けたはずになのに上衣の袖はスッパリと切り開いている。
