第3章 最初のお仕事
お待たせしましたと出向くと、どれでも好きな獲物を選べと、目の前に大小様々ないくつかの刀をガシャンと放られた。
『これは・・・』
足元に疎らになったそれに視線を落とせば、抜き身の物や鞘に収まった物まで数本あった。
「心配する事はない。もちろん模造として写しただけだ・・・刃は潰してある」
まぁ、こんな勝負を吹っ掛けてくる位だから木刀ではないだろうなと予測はしていたけど、こうあからさまに自陣でもよく見るような姿を放られると気持ちのいいものではない。
ましてや、獲物だなんて呼ぶあたり、仲良くはなれないだろうとも。
もっとも、この人と仲良くしようだなんて思ったりしないのも本音だけど。
それよりも考えなければならないのは、私の身の丈にあった刀をどう選ぶべきか、だなぁ。
目の前には大太刀から短刀まで種類豊富に揃えてはあるけど、さすがに私が大太刀なんて振り回せないし、太刀だって長過ぎる。
かと言って短刀じゃ、相手が何を選ぶとしても間合いの取り方がきっと難しい。
体良く懐に飛び込む技量も、私にはない。
排除法で行くと打刀か脇差を・・・ってなるけど、どちらも手に持ってみれば予想より重みがある。
そうなると、もうどれを選んでも使いなせないことには変わりない気もするけど・・・ん?
これって、もしかして・・・いや、もしかしなくても・・・
目に映る一振りの刀を手に取ってよく見れば、それはもう、私がここに来る前によく見ていた刀で、思わず自陣を振り返り、今もなお不機嫌そうな顔をしながらこちらを様子見ている人の姿が見える。
まだ怒ってるよね・・・あの顔。
でも、それでも・・・堀川さんを遣わして私に必ず戻って来いと伝えてくれたのだから、ある意味これがこの中にあるのも何かの縁じゃないか?と、その一振りを鞘から抜き取って見る。
うん・・・この波紋や切羽の感じ、いくら模造刀として作られていても、やっぱりあの人の刀だ。
よし、決めた。
いずれにしても私には少し重いような気もするけど、それはもうどうしようもない事だから使いながら慣れるしかない。
『こちらをお借りします』
チン、と刀身を鞘に収めて申し出れば、ならば早速と言わんばかりにニヤリと笑いを返される。
何度も思うけど、絶対にこの人にだけは負けたくない。
何よりそのニヤニヤした感じが気持ち悪い!
