第3章 最初のお仕事
❀❀❀ 大和守安定side ❀❀❀
「どうした!受けてばかりでは勝負はつかんぞ!」
主と向き合う他所の審神者が叫ぶ声が僕たちにも届く。
始まってからずっと主は守りに徹していて、まだ主が刀を振り上げてはいない。
「ねぇ清光?なんで主は攻撃しないんだろう。防御ばっかりじゃ気力も体力も消耗しちゃうのに」
隣に立つ清光の顔を見る事もなく言えば、清光も確かにな・・・と言葉を返した。
加「でも、ただ受け流してるだけとは思えないけどね・・・なんか策でもあるんじゃない?」
「そうかなぁ?どう見てもあの人と主じゃ体格差もあり過ぎるし、男と女じゃ力の差も歴然としてない?」
例えて言うなら、五虎退と陸奥守くらいの体格差があるようにも思えるけど。
まぁ、陸奥守みたいに鍛え抜かれた体じゃなくて、ポテポテギトギトしてるけど。
そう付け加えて言えば、そ側で聞いていた一期一振が僕の顔を覗いた。
一「主は恐らく、相手の力量を見ているのかも知れない。ああ受け流しては、また同じように構えて真っ直ぐに相手を見据えている。それによく見て?相手は気付いていないかも知れないけど、主は元の場所から殆ど動いてない」
長「さすが一期一振だな。向こうの審神者は刀を振り回しては動き回っているが、主はそれを受け流してはいても自分の動きを最小限にしている・・・主の考えというのは、そういう事だったのか?」
顎に手を当てながら長谷部が言った事に、そう言えばさっき主が内緒話をしてたなと思い出す。
「ねぇ、さっき主と何を話してたの?もしかして作戦とか?」
長「いや、作戦ではない。主はさっき俺に、あの者は人間か?と聞いて来ただけだ。だから、審神者は政府の基準を満たした者だけが選ばれる、特例はあるが・・・と答えたんだ」
あの審神者が人間かどうかを確認するとか、なんの為なんだろう。
そもそも審神者って、主と同じ人間しかなれないのに。
「あっ・・・分かったかも!もしかしたら主は、僕たちみたいに刀剣男士じゃなくて同じ人間だったら普通に剣を交える事が出来るとか思ったんじゃない?!だって薬研たちから聞いたけど、主って和泉守と道場で向き合った時は一撃もしてなかったんでしょ?」
ね!そうだよね?!とその場にいた短刀たちを振り返れば、あの時と今とは状況が違うが確かに主は受けっぱなしだったなと薬研は言った。
