第3章 最初のお仕事
長「仰っている意味がよく分かりませんが・・・」
私が聞いた事に微妙な顔をする長谷部さんに、もっと噛み砕いた言い方でもう一度聞く。
『だから、簡単に言ってしまえばあの人は刀剣男士と呼ばれる方じゃないですよね?と』
ざっくばらんな言い方で聞けば、長谷部さんはちょっと目を見開いて私を見返した。
長「審神者は政府の基準を満たし、選抜された人間だと聞かされております。なので、どの本丸に配置されている審神者も、特例がなければ主と同じ人間であると思われますが・・・」
なるほど・・・私はちょっとした特例だからね。
いったい私にどんな特例があったのかは分からないけど。
長「それがどうかしましたか?」
『あ、いえ・・・ちょっと気になっただけです。もしあの人が長谷部さん達みたいな強さをお持ちなら勝ち目はないかな?って思ったから。でも、大丈夫です・・・た、多分』
長「は、ぁ・・・それよりも主。先程の和泉守の事ですが・・・」
『それも怒ったり気を悪くしたりしてませんから大丈夫です。私が悪いのは分かってますし、和泉守さんが心配してくれての言動だと思ってますから』
長「それなら良いのですが・・・それから主、足袋と髪飾りを外したのは何故ですか?あまり考えたくはないですが、もしや・・・戻らぬおつもりではないかと」
チラリと私の荷物がある場所へ視線を流した長谷部さんが、その瞼を落とす。
『それは長谷部さんの思い過ごしです。せっかく皆さんからの贈り物なのに汚してしまっては申し訳ないと思ったので。リボンを解いても髪はきっちり加州さんが結ってくれてますし、足袋はごく普通の物をこれから履きます。さすがに素足で草履を履いてっていうのは動きにくいですしね』
長「そうですか・・・あの、主。もしもの時はこの長谷部、対峙の間に入らせて頂きたいと思うのですが」
『それも無用です。万が一の時も、黙って見届けて下さい。さっきも言ったように、手助け無用です。とは言っても、もしもの事があれば、私の亡骸だけは拾って下さいね?』
長「主?!それはどういう事ですか?!」
『あぁもう、心配し過ぎです!・・・長谷部さんは私のお母さんみたい』
笑いながら言えば、長谷部さんは笑い事ではありません!とピシャリと言い放つ。
『それじゃ、あの審神者さんを待たせているので私は行ってきます』
