第3章 最初のお仕事
長「では、言わせて頂きましょう・・・主!!何を考えているのですか!今からでも、このおかしな話を断って来て下さい」
それはまるで、子供が拾って来た動物を戻して来なさいと言う母親のように長谷部さんは顔を険しくした。
和「長谷部の言う通りだ。こんな茶番、いちいち付き合ってたらキリがねぇよ」
『茶番なんかじゃありません!!』
やれやれと息を吐く和泉守さんに、私は思わず声を荒らげてしまう。
『他の審神者さんたちが大事にしている刀剣をズルいやり方で取り上げて自分の物にしているんですよあの人は!黙って見過ごす訳には行きません!』
和「じゃあ聞くがな主・・・もし、アンタが負けたらどうする?そしたら他の審神者たちと同じように、泣く泣く長谷部を差し出すつもりかよ!」
『それは・・・』
和泉守さんが言う事は正しい。
私が負けてしまえば、相手の望みのままに長谷部さんを差し出すことになる。
だけどこのままじゃ、言い方は悪いけど、売られたケンカを買ってしまった私の気も済まない。
『それはもう、長谷部さんの代わりに私を差し出してるので問題ありません。私に何かあっても手助け無用です・・・例え手足を引き千切られようとも、それは私の責任です』
一歩も譲らない姿勢を見せると、和泉守さんはチッと舌打ちして、勝手にしろ・・・と背中を向けてしまった。
そんな和泉守さんを見ながら髪に結んだ幅広なリボンを解き、足袋を脱いで素足になる。
せっかく可愛い物を頂いたのに、汚してしまうのは申し訳ないから。
それらを綺麗に揃えて自分の為に用意されていた椅子に重ね置き、手荷物の中から1本の長紐を取り出した。
何かに使うかな?って思って持って来たけど、こんな事で使う時が来るなんてと思いながら、迷うことなくたすき掛けにして邪魔になりそうな袖を捲り上げる。
準備万端・・・と言いたいところだけど、一応確認しておくかな・・・
『長谷部さん、ちょっといいですか?』
複雑な顔を見せたままの長谷部さんに声を掛け、みんながいる輪の中から連れ出し、大きな声では話せないからと腰を屈めて貰い話を切り出す。
『各本丸に配置されている審神者さん達ですけど、あの人達はみんな・・・人間、ですか?』
正確に言えば、私はもう人間とは言えないんだけれど。
まぁその辺は私とこんのすけしか知らないし。
