第3章 最初のお仕事
噂が立つって言うのは、自分がそういう風に都合よく話を撒き散らすってことでしょ!
しかも勝てそうな相手にだけ勝負挑むって何様よ?!
私が新米審神者でいかにも弱そうだから選んだってこと?!
そんなのただの卑怯者じゃない!!
・・・と言いたいけど、ここは我慢して。
『お話の途中で失礼致しました。先程のお話ですが・・・』
「で?どうするんだ?」
『・・・お受け致しましょう』
長「主!!そんなものは受けなくとも!」
私の言葉に長谷部さんが声を荒らげるもそれを制し、嫌な笑いを浮かべるその人を正面から見据える。
『ただし、2つほど私からのお願いを受け入れていただけたら・・・の、お話ですが』
「フム、聞こう」
『私が負けた場合のお引渡しをこの長谷部ではなく、私自身として頂きたく。最もそれは私では役不足かとも存じての事ではありますが・・・いかがでしょう』
必ずしも、私が負けるとは限らない。
けど、それと同じくらい・・・私が勝つとも、限らない。
だからせめて、負けてしまった時の為に長谷部さんを取られてしまう事だけは避けたいから。
「手放してもまた鍛刀すればいいだけのモノを、手放したくはないと?」
『はい。ここにいるみなさんは私より前の主さんが大切にしていた方々でもあり、私の考えでどうにか出来るほど存在は軽くありません。ですから、代わりに私を差し出しましょう』
これに関しては、後悔なんかしない。
「それで、もうひとつと言うのは?」
「もし、私が勝ったら・・・これまで手に掛けた審神者全員への謝罪と、奪った刀剣男士の全てを元の主の所へお返し願いたく」
「・・・いいだろう。もし、勝てたらの話だがな」
瞬きもせず見据えて言うと、それに怯むこともなくニタリと笑って快諾された。
ホント、気持ち悪い。
『それでは恐れながら身支度を整えて参りますので』
そう告げてくるりと背を向ければ、目の前には大きな壁・・・ではなく、強ばった長谷部さんの体があった。
長「主、お話があります・・・宜しいですね?」
否を受け付けない表情に、私も身構える。
ヤ、ヤバい・・・なんか凄い怒ってるオーラが出てる。
『時間がありませんから、簡単になら・・・』
腰が引ける思いで言えば、長谷部さんはグイッと腕を引いてみんながいる中へ私を押し込んだ。