第3章 最初のお仕事
「新しい審神者がどれだけの者かと挨拶に伺えば・・・フン・・・小娘ではないか」
鼻につく言い方をしながら歩み寄る男の人は、妙にニヤリと笑いを浮かべながら私をジロジロと見続ける。
長「我が本丸の主に何用でしょう」
ただならぬ物言いをする他の本丸の主を見て、長谷部さんが私の前に一歩出る。
「そんなに警戒しなくてもいいだろう?私はただ、暫く参加しなかった本丸が久々に顔を出したとなれば、その着任した審神者に挨拶をと思ったまで。それにしても久方ぶりな割には随分と好成績でしたな。こちらとしては次回の演練の参考として、その秘策を伺いたいものだ」
なんかこの人、凄く嫌な感じだなと眉を寄せれば、隣に立った和泉守さんが私に小声で気にするなと言う。
和「こいつはオレたちが負かした所の、だ。負けた腹いせに嫌味のひとつでも言いに来たんだろうよ」
嫌味・・・確かにそうとしか取れない言い方だけど、それはそれで、どうなんだろうと疑問符が浮かぶ。
演練とはいえ、斬られれば痛いし大きなケガをする事もあるって薬研さんからも聞いてたし、実際に今それをしていたところだし。
実際はどんな力が働いているのか分からないけど、自然にすぐ治ってしまうとは言え、私達の方だって何人かはケガを負った人もいるのも事実。
「フン・・・新しい審神者どのは、まともに挨拶どころか話も出来ないと?」
なんか・・・なんだろうこのイラッとする感じ。
だけど、私が新参者である事は間違ってはいないし・・・
ゆっくり大きく深呼吸をしてから、私の前に立つ長谷部さんの隣に並ぶ。
『ご挨拶が遅れまして、大変失礼を致しました。私は新たにこちらの本丸に配属されました、名を・・・桐沢 和奏と申します。以後、お見知り置きを宜しくお願い申し上げます』
深々と頭を下げて言えば、どういう訳か私の背後からざわめきが起きた。
なんでだろ?と思いつつも、今は目の前のこの人が気になって、ざわめきの理由は帰ってから長谷部さんに聞けばいいかとも思い、下げた頭をゆっくりと戻した。
「挨拶は、及第点ってとこか。フン、まぁ良かろう」
挨拶はって・・・この人は他に、何を求めているんだろう。
『他にもなにか至らない所がありましたら、宜しく御指導の程を』