第3章 最初のお仕事
薬研さんを手伝いながら、にっかりさんの傷の処置を終えてホッと息を吐く。
いくらすぐ治るとは言っても、これだけの傷を受けたら心配は収まらない。
『負傷者はどんな小さな傷でも薬研さんに見せに来て下さい』
和「ちょっとの間だけ我慢すりゃ、すぐ治るぜ?」
みんなの顔を見ながら言えば、和泉守さんが堀川さんに向かって、な?と言う。
『時間が経てば帰るまでに治ってしまうとはいえ、私は皆さんが痛いのを我慢するとか、そんなの嫌です。痛い物は痛い、それでいいじゃないですか』
指先をちょびっと切っただけでも痛いのに、刀でサクッと斬られるとか・・・そんなの想像するだけでも身震いする。
『なので、ちょっとでも傷を負った人は薬研さんの前に並んで下さい』
石「私は怪我をしていないから、薬研に手伝うよ。その方が少しでも早く終わるからね」
快く手伝いを申し出てくれた石切丸さんにも手を借りて、私と石切丸さんとで軽傷者の傷の消毒などをしていく。
それ以上の負傷者の対応は薬研さんにお願いした時に、ちょうど手当てを始めた山姥切さんに・・・
薬「山姥切。実はこんな事もあろうかと、研究中の新薬を持って来た。フッ・・・使ってもいいか?」
なんて怪しげな笑みを浮かべながら言う薬研さんを見たけど、山姥切さんは軽傷だって言ってたし、怪しげな新薬とやらを使うことないだろうし。
そっと横目がちに様子を伺うと、いつも冷静な山姥切さんがズルズルと後ずさりをしながら目を見開いている。
山「い、いや、待て・・・早まるな薬研!俺はそこまで深手を負っている訳じゃな・・・ぅあぁぁぁぁ!」
ひゃぁぁぁぁ・・・
山姥切さん・・・帰りまでにはきっと元気になっている事をお祈りします。
長「ハァ・・・また薬研は新しい薬とやらを山姥切に使ったのか」
山姥切さんの叫びに呆れた息を吐いた長谷部さんに、また?と聞き返す。
長「えぇ、またです。主が着任される前にも、あぁやって薬研は山姥切に新薬を試してはデータを記録するという荒業を」
じゃあ薬研さんのあの噂は、本当だったんだ・・・私も体調管理には気を付けておこう。
そう言って笑って長谷部さんの軽傷の処置を終えたところで、背後からジャリ・・・っと私達に歩み寄る誰かの気配を感じる。
その足音に振り返れば、そこには私とは色が違う上衣を来た審神者さんが立っていて。
