第3章 最初のお仕事
❀❀❀ 山姥切国広side ❀❀❀
次「振り回しときゃ当たる!!」
『ひゃっ!』
嬉々として大太刀を振り翳す次郎太刀さんを見て、主が顔を両手で覆う。
「・・・あんたが斬られてる訳じゃないだろう」
『そうなんですけど、なんか見てるだけで背筋にゾクッとして、つい。それに、傷はすぐに治るとは聞きましたけど、次郎太刀さんにザックリ斬られたあの人は大丈夫でしょうか』
おずおずと指の隙間から覗き見ては、またすぐにその目を覆う姿に小さな息が漏れた。
「大丈夫ではないだろうな。演練とはいえ、斬られれば相応に・・・痛む」
さっきの自分達の部隊で負ってしまった小さな傷に視線を向けながら答えれば、それを見て申し訳なさそうな顔をして主は俺を見る。
『ですよね・・・それなのに隣に居て貰うとか、すみません山姥切さん』
「気にするな。俺は長谷部の代わりにここにいるだけだ・・・写しの俺には、それくらいが丁度いい」
元より被っている布を少し深く被り直しながら言って演習中の仲間へと視線を戻すと、審判の合図で演習が終わった。
「・・・終わったようだな」
『はい・・・でも、様子が変です』
改めて見れば、長谷部がにっかり青江の前に膝をつき声を掛けているのが分かる。
「にっかり青江か・・・思ったより傷が深いようだな」
『じゃあ早く手当ての準備をしないと!薬研さんお願いします!痛っ・・・』
「まずは落ち着け。あんたまでケガをしたら薬研が忙しくなるだろう」
慌てて立ち上がろうとして椅子ごと転がった主に手を貸し立ち上がらせていると、長谷部に肩を借りながらにっかり青江が戻って来る。
長「主、申し訳ありません。にっかり青江に傷を負わせてしまいました」
『お疲れ様でした。にっかりさん、いま薬研さんが手当ての準備をしてくれてますから、まずは服を脱いで下さい。私も手をお貸しします。あ、血が・・・』
長「あ、主?!」
口端に流れる血を主が構わず自分の袖で押さえる。
に「フッ・・・演習とは言え戦っているんだ、これくらい普通さ。それとも、そんなに僕に触れたいのかい?」
『触れ・・・わ、私は別にその、手当てのお手伝いを、と・・・』
にっかり青江の言葉にみるみる顔を赤くする主に、皆がクスクスと笑い出す。
そんな主を見て緩み出す顔を隠すように、俺は布をまた深く被った。
