第3章 最初のお仕事
『大変お待たせしてすみません!』
和「遅せぇよ、何やってたんだ?」
私の声に振り返った和泉守さんが、待ちくたびれた様子で零す。
次「アンタねぇ・・・年頃の女の子は身支度に時間をかけるモンなのよ?アンタみたいにそこらに脱ぎ散らかしてサッと着替えてるワケじゃないの」
堀「大丈夫ですよ、次郎太刀さん。兼さんが脱ぎ散らかしても、僕がちゃんと片付けてますから」
次「はぁ・・・出た出た、世話焼き女房」
やれやれと呟く次郎太刀さんの言葉に、周りにいたみんなが小さな笑いを零す。
和「とにかく今日は久々の演練だ。気合い入れて行くぞ!」
長「なぜそこでお前が仕切るんだ」
片眉をピクリと動かす長谷部さんに、私も、まぁいいじゃないですかと笑う。
『遅れた私が言うのもなんですが、そろそろ出発しましょうか?』
そう、言ったのはいいのだけれど。
『あの、鶴丸さん・・・?』
目の前に連れて来られた馬を見てから、その手綱を引いている鶴丸さんの顔をじっと見る。
鶴「どうかしたか?」
『どうしても私、この子に乗らなきゃダメでしょうか・・・』
よしよしと馬を撫でる鶴丸さんに言えば、鶴丸さんはその手を止めて私を見る。
鶴「演練に出向く時、審神者は馬に乗って行くのが常識だって長谷部にも説明されただろ?それにこいつはここにいる馬の中で1番大人しいやつだぞ?」
それは、そうだけど・・・
『まだちょっと怖くて、ひとりで乗るだとか到底無理です・・・』
そっと馬を撫でながら言えば、鶴丸さんはなんだそんなことか?と目を輝かせた。
鶴「おーい、長谷部!主がひとりじゃまだ馬を操れないって言うから、俺も一緒に乗るぞ?」
『えっ?!鶴丸さん?!』
鶴「なんだ?ひとりじゃ怖いんだろ?なら、練習した時みたいに俺が一緒に乗れば怖くないだろ?さ、時間もないんだし・・・っと、ほら、手を貸せって」
言いながら鶴丸さんはサッと馬に乗っては、私に手を差し出してくれるけど、それはそれでなんだか恥ずかしくて、なかなか手を伸ばす事が出来ない。
鶴「しょうがねぇな・・・光坊!ちょっと手伝ってくれ」
馬上から鶴丸さんに呼ばれた燭台切さんがこちらを見て、あぁ、なるほど・・・と頷きながら歩いて来る。
燭「最初のうちは慣れないと乗り降りも怖いよね?はい、僕に掴まって?」