第3章 最初のお仕事
『えぇっ?!こんのすけは一緒に行かないの?!』
朝ご飯を済ませてから部屋で身支度をしていると、こんのすけから自分は本丸で留守番をするんだと聞かされ、髪を結い梳かす手が止まる。
「左様でございます。ですから主は、何も心配なさらず演練へと」
いやいや、心配なさらず・・・じゃないよ!
初めての演練で、手続きとか、なんかそういうのあったらどうすればいいの?!なんて慌てて言えば、こんのすけは表情ひとつ変えずにふわりと尻尾をゆらめかせる。
「演練の時の私の役割は、そういうものでございますよ、主。それはここに限らず、どこの本丸でも同じ。現地での事は近侍がお世話をする決まりになっておりますゆえ、不都合がございましたら近侍に」
『そうは言っても、長谷部さんだって今日は部隊に入ってるし・・・そうだよ!長谷部さんが実習の時に何かあったら長谷部さんには聞けないじゃん?!』
「それも心配なさらずとも、その時は別の手の空いているものが主の側におりますので、その者に」
『そんなぁ・・・』
なにを言ってもこんのすけは留守番係だから行く事は出来ないの一点張りで、ちょっと緊張してたところが大いに緊張していく。
加「主~、準備出来てる?長谷部がもうみんなを集めだしてるけど?って、まだ髪結い終わってないの?」
開けっ放しにしていた襖の影から加州さんが顔を出し、まだ整え終わってない髪を見てやれやれと息を吐く。
スタスタと私のところまで来た加州さんに、それ貸して?と言われ櫛を渡せば、加州さんは慣れた手付きで私の髪を結い上げた。
『なんか、すみません・・・』
加「礼を言うのはまだだって。はい、こっち向いて?外に出掛けるんだから、ちゃんとしないとダメじゃん?」
言いながら加州さんは化粧道具を引っ張り出しては、嬉々としてそれを施していく。
なんか前にもあったよね、こういうの。
加「よし、完璧!どう?ちゃんと可愛くなってるでしょ?」
『・・・はい。ありがとうございます』
至近距離で言われたのが恥ずかしくて視線を外せば、その先にいたこんのすけも満足そうに尻尾を揺らす。
加「じゃ、そろそろ行くよ主。みんな待ってるから」
『はい!こんのすけ、留守番は宜しくお願いします』
行ってきますと言って加州さんに続いて足早に外へ出れば、既に部隊毎にみんなが待機していて。
