第3章 最初のお仕事
『ありがとうございます、凄い嬉しいです!明日は髪を片側に寄せて三つ編みにでもと思ってたので、必ず使いますね?』
三つ編みの先にリボンをと言えば、加州さんがそれじゃ可愛くないじゃん!と口を尖らせる。
充分、可愛いと思うけど。
ってより、そもそも演練に可愛い格好って大丈夫なんだろうか?
加「だからさ、この前みたいに結い上げた方が主は可愛いんじゃないのって」
『この前って?』
加「主が稽古場に来て和泉守と手合わせした時!あれ見た時に、あの髪型にリボンつけたらもっと可愛いのにって思ったんだよね」
あの髪型って・・・ポニーテールの事かな?
歌「主、加州はずっとそれを考えていたようで、僕のところに演練までにそういうのを作らないか?って相談しに来たんです。それで、せっかくだから足袋にも同じ桜を一凛」
そう言って歌仙さんはふわりと笑って加州さんを見たけど、加州さんは内緒にしてって言ったのに・・・と言いながらツンと横を向いた。
前から時々思ってたけど、こういう時の加州さんて・・・なんだかカワイイかも。
『じゃあ、明日はその加州さんのお勧めのとおりにします』
加「そうしなよ。きっと似合うから。それから、明日の着替えは大丈夫?最初の日みたいに変な着方しないでよ?」
『それなら心配ないです。この形なら気慣れているというか、普段着よりこっちの方がずっと着てた感じなので』
ここに来た初日は、帯の締め方なんてうろ覚えだったから怪しげな着方を加州さんと長谷部さんにお披露目しちゃったんだよね。
『それより、明日は加州さんも歌仙さんも頑張って下さい。私も精一杯、応援しますから』
そう言うと2人は目を細めながら頷いて、それじゃ明日は忙しくなるからと自分たちの部屋へと帰って行った。
私はそれを見送った後、届けられた物をそっと枕元に置いて、いつもより少し早く布団に潜り込む。
明日はいよいよ、私にとって最初のお仕事。
何事もなく、無事に終わりますように・・・
そう願いながら、そっと目を閉じた。