第3章 最初のお仕事
❀❀❀ 和泉守兼定side ❀❀❀
『ま・・・参りました・・・』
オレは今、どうしたってんだ?
受けるのが精一杯と見える主に、最後、これで終わりだとばかりに撃を・・・
思わず自分の手のひらを見つめ僅かに視線を落とせば、その先には軽く息を乱して床に座り込んだままの主がいた。
「ほらよ・・・立てるか?」
言いながら手を差し出せば、主は申し訳なさそうにオレの手に自分の手を重ねてくるのを見て、キュッと掴んで引きあげてやるも、その掴んだ手の、初めて触れる柔らかさに驚く。
なんて・・・小せぇ手だ。
この小さな手のどこに、あれだけの・・・いや、もしかしたら意外と鍛え込んでるって事も・・・
『あの、和泉守・・・さん?』
「主・・・ちょっといいか?」
『え?あ、はい・・・えぇっ?!あ、ちょっと?!』
不思議そうな顔をする主の手を引き寄せ、有無を言わせず腕や肩を撫でては確かめるように線を辿り、腕の中にすっぽりと収まるほど華奢な体をしていた。
『い、いいいいいい和泉守さんっ?!』
「ありえねぇ・・・」
呟きながら頭に顎を乗せて息を吐けば、それと同時に右から左から目の前に突き出される・・・細い影。
長「和泉守、貴様・・・主に何を!」
一「それ以上、主に無礼を働くのであれば・・・さすがに私もお覚悟を・・・」
「のわぁっ?!ま、待て待て待て!ひとまず落ち着け一期一振!」
禍々しい気を放ち出す一期一振に圧倒されて、主から離れジリジリと後ろに下がる。
「今のは、あれだ・・・こんな細っこい体のどこに、あれだけの受け身を取る力があるのかってやつだ・・・その、すまねぇな・・・主・・・」
『・・・いえ、大丈夫です。えっと、私はこれで・・・失礼します』
驚きの顔を晒したままの主がそう言って、慌てた様子で駆け出していく。
長「和泉守、次はないからな・・・主、お待ち下さい!」
後を追うように長谷部も立ち去り、微妙な空気だけがその場に残る。
それを見送りながらも、未だ手に残る柔らかな感触を確かめるように、その手を握りしめて息を吐いた。