第1章 明日って必ず来るものじゃなかった
ここ、どこ?
重い瞼を開けると、そこはなにも見えない暗闇で。
自分がいま、立っているのかどうなのかも分からないのに、ふわふわと、ゆらゆらと···まるで体が水に浮いているかのような不思議な感覚だけを感じる事が出来た。
そう言えば私···確か、通り魔に刺されて···それで···
それで···?
どうなったんだっけ?
あの時ギュッと痛みが走る場所を探しても、どこも痛くない。
確かに刺されて、それでそのまま倒れて···どうなったんだっけ?
···思い出せない。
もしかしてその経験が夢だったんじゃないかと思い始めた時、辺り一面が眩しい光に包まれて、その眩しさに思わず両手で目を覆った。
『眩し···』
指の隙間から差し込む、不思議な光。
白でもなく。
赤でもなく。
黄色でもなく。
その光が何色なのかは分からないけど、表現するとしたら、どことなく暖かさを感じる···そんな光でもあった。
「やっとお目覚めでごさいますか?」
突如として聞こえて来た声に思わず身構える。
···とは言っても、浮遊感満載だから身構えるというのが正しいのかどうかは分からないけど。
『誰?』
眩しさに目が慣れて、声がする方へと顔を向ければ···なんかいる?!
「誰?と聞かれましたら、名前は···こんのすけ、と申します」
ふわっふわの尻尾をフリフリしながら答えるなにものかに目を丸くする。
尻尾って···人じゃない?!
『猫···と言うよりは、キツネ?』
若干頭が混乱しながらも呟けば、どう見ても立派なキツネでございましょう!と返って来る。
『それで、こんのすけさんに聞きたいんたけど···ここってどこ?それに私、確か通り魔事件に遭遇して、刺され···ん?え?なにこれ!!!』
話しながら刺された場所を確認しようと視線を下げれば、まるで巫女さんのような服を着ていて驚く。
『誰かが着せ替えた···ってことだよね?!』
思わず聞けば、こんのすけという可愛らしいキツネ???さんは尻尾をふわりと振るのみばかりで。
『なんだかよく分からないけど、どうなってるの?』
「それはこの、こんのすけが説明いたしましょう」
その後に聞かされた説明は、言葉を失うような内容で
『ウソ···でしょ···?』
「全て、本当の事でごさいます」
私は···死んだ?
