第3章 最初のお仕事
あっ・・・早くも油揚げ目当て?!
こんのすけに相談しようとも、その当人はいないし。
仕方なく、ほんの少しの事だけを話すことにした。
『みなさんに私の話をしていいのか、正直分かりません。だけど、ひとつだけ・・・私の祖父は剣術道場を開いてました。小さな子供達にそれを教えて、私も子供の頃から祖父の近くにいました』
和「あんたも、手習いを受けてたのか?」
『そうですね、少し。でも、祖父からはいつも怒られてましたよ?いつになったら上手くなるんだって。褒められた事なんて一度もありませんでしたから』
和「で、その爺さんってのは今も剣術教えてんのか?」
『それは・・・』
和泉守さんの言葉に、どう答えたらいいか迷ってしまう。
きっと今も教えているとも、それは分からないとも、どっちにしても答えにくくて、つい、口篭ってしまった。
和「・・・悪い。今のはナシだ」
言葉を濁したままの私を見て、和泉守さんがバツの悪そうな顔で呟く。
『なんか、その・・・すみません・・・』
和「いや、いい・・・そうだ!あんた少しなら手習いしてたんだろ?だったら試しにオレと手合わせしねぇか?」
『あ、はい・・・・・・ぅえぇっ?!』
堀「兼さんっ?!」
手合わせって、いや、ムリでしょ!!
だって、どう考えても技量の差は歴然としているし、っていうより、その前にそういう問題でもなくて!!
『あ、あの!それはちょっと如何なものかと?!』
なんとかこの場を回避しようとしても、和泉守さんは妙に乗り気で私にほらよっと木刀を放る。
長「和泉守!さすがにそれは許可出来ない!」
和「あぁ?主と手合わせするってぇのに、なんで長谷部の許可が必要なんだ?」
長「俺は主のお世話係だ・・・故に、主が怪我をさせる訳にはいかないからだ」
そうそう!長谷部さん、もっとそこを強く言って!!
和「ただの軽い手合わせで怪我なんかしねぇだろ。真剣じゃねぇし、木刀だ。国広を見てみろ、なんともねぇだろ」
いやいやいやいや!
例え稽古用の木刀とは言え、私と和泉守さんが向かい合ったら大怪我しますから!
・・・私が!!
長「さっきまで和泉守と手合わせしていた者を見る限り、主が無事で済むとは思えん」
長谷部さんが見る方向には、笑顔を見せながらも肩で息をする鯰尾さんが転がっている。
あれが、数分後の私か?!
