第3章 最初のお仕事
乱さんの声にハッとして前を見れば、一期一振さんに弾かれた厚さんの木刀がクルクルと回転しながら私の方へ飛んで来るのが見え、咄嗟に手にしていた木刀を構えて打ち退ける。
瞬間、握った手に多少の衝撃は受けたけど・・・とりあえず誰にも当たる事がなくて良かったと息を吐く。
『あぁ・・・びっくりした。誰にもぶつからなくて良かった。あ!堀川さんの木刀を勝手に振り回したりしてごめんなさい!』
堀「え・・・?あ、はい・・・」
思わず服でゴシゴシと拭って返せば、受け取った堀川さんは目を丸くしたまま微妙な返事を返した。
一「主、お怪我はありませんか?!」
長「主!どこか痛い所はありませんか?!ここは?!こっちは?!」
慌てた様子で駆け寄ってくる一期一振さんと長谷部さんにあちこちを確認され、どこにも当たってはいないし、ちょっと手に衝撃があっただけでなんともないと説明すれば、少し赤くなった手のひらを見て漸くその瞳に安堵の色を見せた。
乱「ボクもびっくりしちゃったよ!ねぇ、あるじさん、もしかしてだけど剣術とか習ってたの?」
『・・・え?!ど、どどど、どうして?!』
和「オレも聞きてぇな。さっきの、単なる偶然にしちゃァ、出来過ぎだろ。初めてそれを持つようなヤツの手の内じゃあねぇよな?」
和泉守さんはそう言って、堀川さんの手の中の物をチラリと見た。
まずかったかなぁ・・・咄嗟に構えたから、無意識にいつもの感じで握っちゃったのを見られてた・・・?
でもそんなの一瞬の事だったし、今のは誰でも飛んで来る木刀に意識が向かってたはずなのに・・・和泉守さんて、凄い着眼点だ・・・
和「で?どうなんだ、主」
『えっと、ですね・・・それは・・・』
話しても大丈夫なんだろうか?
でも、それを話したことによって私が1度死んでいるという事がバレたりしたらと思うと、思うような言葉が出て来ない。
どう話せばいいのか迷って、こんのすけに助けを求めようかと足元を見れば・・・えっ?!
『こんのすけがいない?!いつの間に?!』
さっきまでいたはずのその場所から、こんのすけは忽然と姿を消していた。
こんな肝心な時にいないとか・・・こんのすけ!!
五「あの、あるじさま・・・こんのすけなら、燭台切さんのところに行くって言ってました」
燭台切さんって、今はお勝手場じゃなかった?
