第3章 最初のお仕事
『きっと凄くいい物なんだろうなぁ・・・それにちゃんと、種類も揃ってる』
薬「何がだ?」
思わず呟いた言葉に、薬研さんが不思議そうな顔をして私を見る。
『あ、いえ・・・稽古用とはいえ、ちゃんとそれぞれの刀と同じように長さとか調節してあるんだなって』
思わず薬研さんの手にある物を見ながら言えば、なんだそんな事かと薬研さんは笑った。
薬「実戦に行けば、俺達は他の刀を使う事はまず無いからな。短刀には短刀用、打刀は打刀・・・いち兄は太刀だから、あの長さだ。ちなみにそれぞれ重さも違う。鍛錬とは言え実戦と変わらない・・・大将、持ってみるか?」
『え?私が?』
いいから手を出せと言われておずおずと両手を出せば、そこに乗せられる短刀用の木刀は私がおじいちゃんに授けられた守刀と同じ位の重さで。
薬「どうだ?本物と大して変わらないだろう?」
『そう・・・ですね』
堀「主さん、僕のも持ってみますか?」
私達のやり取りを聞いていた堀川さんが自分のものを差し出し、素直に受け取る。
『うわ・・・私は本物を手にした事はないんですけど、脇差ってこんな重さなんですね・・・』
脇差でこの重さなんだから、これと合わせて打刀と二本差しにしていた彼らの持ち主は、余程鍛えていたんだと実感する。
この脇差の持ち主って言えば、当然、あの土方歳三な訳で。
確か土方歳三の愛刀とされる物は他にもあと二振りあったけど・・・その二振りとされる人物はここには居ないことを考えると、和泉守さんと堀川さんはこんのすけの言う政府とやらから拝命されてここにいるって事になるんだろうか?
加州さんも大和守さんも、土方歳三と同じ新選組の沖田総司の愛刀で・・・そこも三振りの内の二振り。
とは言っても、残りの一振りは実際にあったのか分からないとされている記述も多いから、どうなのかは分からないけど。
他の人達も持ち主の時代も様々で、前に一期一振さんが言っていた事を思い出し、同じ世界観にみんなが存在してる事は凄い事なんだと改めて実感する。
私、ホントに凄い所に派遣されたんだ・・・
堀川さんの木刀を握り締め感慨に浸っていると、ひときわ大きな音が鳴り響き、そして・・・
一「主!!」
厚「しまった!・・・大将!!」
乱「あるじさん危ない!避けて!!」