第3章 最初のお仕事
『こんにちはー!』
こんのすけと道場に顔を覗かせれば、入ってすぐの所にいた薬研さんが、汗を拭きながら顔を上げる。
薬「よう、大将。こんのすけと散歩か?」
前から思ってたけど、どうして薬研さんて私を大将って呼ぶんだろう。
『散歩じゃないですよ?こんのすけに、皆さんがここで稽古してるって聞いたから見学に来たんです。今度の演練でどんな風に部隊分けをするかの参考にって思ったんで』
薬「そうか、なら丁度いい。今はいち兄が兄弟達を順番に入れ替えて手合わせをしてる所だ。大将、こっちに」
中に招き入れられながら薬研さんの視線を辿れば、確かにそこには一期一振さんと手合わせをしている。
一「ほら厚・・・また隙が出来ているよ」
流れるような動きで交わしながらもちゃんと反撃をする一期一振さんは、なぜか微笑みを浮かべて楽しそうに厚さんからの攻撃を軽々と受け流している。
厚「・・・っ!まだまだぁ!」
凄い・・・手にしている物はちゃんと稽古用の木刀なのに、それでもお互い本気の勝負をしている。
まぁ・・・一期一振さんは嬉しそうに微笑んでるけど。
乱「厚!頑張ってぇ!」
そんな2人を応援する乱さんも、手をギュッと握ってるし。
乱さんか・・・最初はびっくりしたもんなぁ。
自己紹介の時に、ここに私以外にも女の子がいる!なんて思ったら、ちゃんと男の子なんだもん。
見た目はあんなに女の子らしくて可愛いし、髪も長くてつやつやサラサラで・・・なんか、神様って不公平。
私なんて髪が長いだけで女子力ないっていうか?
その長く伸ばした髪だって、おじいちゃんが私が男だったら良かったのにって繰り返すのに反発して伸ばし続けてただけの髪だし。
そう言えば髪が長くてツヤツヤっていえば、にっかりさんも次郎太刀さんも・・・それから太郎太刀さんも・・・とか、数え出したらキリがないけど。
あ、和泉守さんなんて耳飾りとかしてオシャレだし!
やっぱり、神様は不公平?
っていうより、そもそもここにいるみんなが神様そのものだったりもするんだけどさ。
まぁ・・・いっか・・・?
見た目や容姿はこれから先の私にはあんまり関係ないし。
それにしても、ここの木刀の素材ってなんだろう?
打ち合うたびに小気味いい音が響いていて、生前自分が使っていた物とは違う響きを感じる。