第3章 最初のお仕事
に「それで、君のため息の理由を聞いても?」
『それは・・・』
なんとなく居心地悪くなりながらも正直に話せば、それを聞いてにっかりさんは楽しそうに笑い出した。
に「じゃ、行こうか」
『行こうって、どこにですか?』
片手に私のお膳を持ち、反対側の手で私の手を引いて立ち上がるにっかりさんは、いいから着いておいで?と歩き出す。
あまり手をつけていない食事を自分で片付けろって事なのだろうかと困惑しながら着いていけば、その行き先はみんなが食事を取っている場所へと辿り着き・・・にっかりさんはなんの迷いもなく障子を開けてしまう。
長「・・・にっかり青江?主の部屋から離れ・・・主?!」
『あはは・・・こんばんは・・・です』
にっかりさんの後ろから顔を出した私を見て、長谷部さんがポロリと箸を落とす。
『あの、ひとりで食べるのって実は寂しくて・・・それをにっかりさんに話したら、ここに』
長「そう、でしたか・・・しかし、」
加「いいんじゃない?主がみんなと食べたいってなら。それに、主だけひとりで食べなきゃいけないって決まりはないでしょ?」
長「加州、そうかも知れないが前例がない」
やや険しい顔を見せる長谷部さんを見て、やはり私は部屋に戻った方がいいんじゃないかと、思い始めた時。
次「ホンットに頭が硬いんだから長谷部は。前例がないなら、作っちまえばいいだろう?新しい場所には新しい風が吹くってね・・・ほら主、長谷部がうるさいのは放っておいて、さっさと早く膳をこっちに持ってきな?」
既にほろ酔いの次郎太刀さんの手招きに、どうする?と視線だけで聞いてくるにっかりさんに、私はぜひ!と大きく頷き返す。
に「決まりだね・・・じゃあ、僕も隣にするよ」
長「はぁ・・・全くお前達は・・・」
和「いいんじゃねぇの?いつまでも主を独り占めしたいってなら、話は別だけどな?」
長「・・・和泉守!」
私達が移動する向こう側でそんな会話があったとは知らず、次郎太刀さんの隣に腰を下ろした私を囲むように短刀さん達もわらわらと集まって来る。
この夜、この本丸では主という立場の私も、みんなと一緒に食事を食べるという・・・新しい風が吹き抜けた。