第3章 最初のお仕事
長「では、その日に向けて鍛錬を怠ることのないよう、みんなにも伝えておきます」
『お願いします。私も覚えなければならない事を教えて下さい。その・・・決まり事とか。今度は欠伸をガマンするとかしませんから』
そう言って笑うと、長谷部さんはフッと笑って見せた。
それから少しして夕飯の支度が出来たからと食事が運ばれて来て、それと入れ替わるようにして長谷部さんも食事を取るためにみんなが集う場所へと行ってしまう。
またここで、ひとりでご飯を食べるのか・・・
実際には部屋の外には当番で食事を運んで来てくれた人が、長谷部さんが戻るまで待機していてくれるんだけど、だからと言って一緒に食事を取る訳ではない。
私もみんなと一緒にご飯を食べたいだなんて言ったら、長谷部さんはなんて言うだろう。
もしそれが叶うなら、部屋の前で待機してくれてる人も後でお勝手場でひとりで食べることもないだろうに。
ここに来るまでは家族全員でわいわいとしながら食べていた生活を送っていたから、ひとりでご飯を食べるのはなんだか寂しくて、つい、ため息を吐いてしまうと部屋の外からクスクスと笑い出す声が届く。
「随分と大きいねぇ・・・ため息の事だよ?」
うぅっ、そうだった・・・今日はにっかり青江さんが長谷部さんの代わりにそこに待機してたんだった。
『にっかりさん・・・もし良かったら、話し相手になってくれませんか?』
箸を置いて声をかければ、にっかり青江さんはお許しが出てるなら失礼するよと言いながら襖を開けて入って来る。
に「おや・・・食が進んでいないようだね」
部屋に入るなり私のお膳を見て、小首を傾げる。
『えぇ、まぁ・・・』
に「好き嫌いをすると長谷部にお仕置をされるよ?あぁ、もしかしてそれを希望してるのかい?」
口元に手を当てながらにっかりさんは笑い、そっちがご希望なら、僕も混ぜて貰おうかな?と、またクスクスと笑う。
いや、ちょっと・・・にっかりさんにお仕置されるだなんて・・・なんかいろんな意味で怖いよ!
始めて顔を合わせた時から怪しげな言動に包まれているにっかり青江さん・・・謎多き人だし。
に「なんて、冗談だよ」
『あ、はは・・・』
にっかりさんが言うと冗談に聞こえませんよ!
引き攣りそうな顔を堪えて笑い返せば、にっかりさんはそんな私を見て目を細めた。
