第3章 最初のお仕事
燭「僕も同じ意見かな。何をするにも初めてがあるのは誰でも同じだから」
「そうだな・・・では主には俺から演練への参加をどうするか聞くことにしよう」
演練までに今少し、勉強して貰わなければならない所もあるからな。
堀「あの、長谷部さん。その主さんですけど」
「・・・?主がどうした」
和泉守の一歩後ろに立つ堀川は、視線を前に見据えたまま俺を呼ぶ。
堀「たった今、石切丸さんと池に落ちました・・・」
石切丸と?
・・・池に?
・・・・・・落ちた?!
堀川の視線を辿って見てみれば、堀川の言う通り石切丸と共に池の中で石切丸と並んで頭からびしょ濡れになっている。
燭「2人とも風邪ひかないといいけど・・・」
和「短刀達と走り回ってて躓いた主が、石切丸を巻き込んで一緒に落ちたからな」
「和泉守!冷静に見てる場合じゃない!・・・主ー!!」
瞬時に主の元へ駆け寄れば、水の中で石切丸に抱えられながら陸地へと向かって来る。
「いったい何があったと言うんですか・・・」
手を貸しながらこちら側へ引き上げれば、主は少し申し訳なさそうに石切丸を振り返る。
『駆け回っていたら躓いちゃって。あ、転ぶ!と思った所に池の鯉を見ていた石切丸さんを巻き込んで落ちちゃいました』
石「私も驚いたよ。危ないって声を掛けられて振り返った時には、もう目の前にいたからね。咄嗟に支えようとしたけど一緒に落ちてしまったよ」
ポタポタと髪の先から落ちる滴を払いながら、主は石切丸にケガがなくて良かったですと安堵の顔を見せる。
これでは和泉守に小娘だと言われても仕方ないと思いつつも視線を落とせば、その細く白い膝から流れている物に気が付く。
「笑い事ではありません、主こそお怪我をされているではありませんか」
俺の言葉に主も同じ場所を見て、傷の程度を確認しては眉を顰めた。
『多分・・・大丈夫です。舐めときゃ治るってやつです』
「・・・薬研の所に行きましょう、主。いや、その前に風呂ですね」
やれやれと息を吐きながら主の手を引き歩き出す。
全く、新しい主は手が掛かる・・・
そう思いながらも、なぜか穏やかな気持ちになる自分がいることを擽ったく思えた。