第3章 最初のお仕事
❀❀❀ へし切長谷部side ❀❀❀
『鯰尾さん見っけ!』
鯰「うわ、見つかった!逃げろー!」
『あっ!鯰尾さん逃げるなんてズルい!待ちなさーい!』
粟田口の短刀や脇差達とかくれんぼなのか鬼ごっこなのかを楽しむ主の声を聞きながら、近くの縁側に座り燭台切と茶を啜る。
燭「楽しそうだね、主。初めの頃は表情も硬かったみたいだけど、今はみんなに打ち解けて・・・まるで主だという事を忘れてしまいそうだよ」
「そうだな・・・今までの主とは、全く違う。でも、俺達にとっては、主だ」
そう返せば燭台切は、確かにそうだけどねと笑う。
燭「そう言えば長谷部くん、そろそろあれが始まる頃だけど今回はどうするの?前回のは主が不在だって事で参加は出来なかったけど」
「そうか・・・そうだな。しかし主が着任したとはいえまだ日が浅い。今回も参加は見送るのが万全かと俺は考えているが」
燭台切が言っているのは、定期的に行われている演練の事だ。
本来ならば審神者がいる本丸は参加するのが当然とも言えるが、何せ演練と言えどケガをすればあの無邪気に笑う主に流れ出る血を見せることにもなる。
勿論、そんな事はそうそうないとは思ってはいるが・・・ごく稀に、短刀達が集中して狙われては負傷してしまうという事もある。
「そんな事で迷うなんざ、お前らしくもねぇな」
どうしたものかと考えていれば、隣にドカッと腰を降ろすと共に、そんな言葉が投げられる。
和泉守か・・・
和「いくら見た目が小娘だからって、審神者は審神者。政府が見込んだから、ここへ寄越したんだろうが」
「言葉を慎め和泉守。主を小娘だなんて言うものではない」
和「あぁ?どう見ても小娘だろうが、ありゃ。見てみろ長谷部・・・未だかつてあんな風に駆け回ってキャッキャと笑ってた主がいたかよ?」
言われてみれば確かにそうかも知れないが、そうとはいえ俺達の主には変わらないだろうと続ければ、和泉守は大きく息を吐いて俺の顔を見る。
和「例えばの話だが・・・初めての演練同行でオレ達の誰かが傷だらけになったとなりゃあ、思うところもあるだろうけど。そうならないようにすりゃあいいだけのこった」
和泉守はそう言うと、燭台切から茶を受け取って飲み始めた。
和「ま、アレだ。お前が戦術だの何だのっつう座学を教え込んでるなら、それこそ何の問題もねぇだろうよ」
