第2章 新しい生き方
普通の人間とは時間の流れが違う。
って言っても、その人間というのに私が当てはまるのか分からないけど、時間の流れが異なる場所に私は今いるんだと、それはそれでまた実感していく。
『私にどれだけの時間があるかは正直分かりません。けど、それでも、こんのすけにここへ連れて来られた意味をこれから少しずつ理解して行こうと思ってます』
一「そうですね。一度に多くの事を学ぶのは骨が折れますから、少しずつでも私達の事をゆっくりと理解される事はいい事だと思います。ここにいる者達は存在していた時代も背負っていた気持ちも・・・それぞれですから」
空に浮かぶ月のように静かな微笑みを見せ、一期一振さんは虎さんの頭をまた撫でた。
それからもいろいろな話をして、ふと静かな瞬間が訪れた時、背後の襖が大きな音を立てながら開かれると共に私を呼ぶ声が響く。
長「主ー!主はどちらに?!」
加「だーかーらー!主なら縁側に出てるって言ってるじゃん!」
開け放たれたその場所から、長谷部さんと加州さんが姿を現す。
『あの、私ならここに・・・います、けど』
小さく手を上げて見せれば、それを見た長谷部さんが大袈裟なくらいに安堵の顔を見せた。
長「よくご無事で・・・おひとりで外に出られたと聞いて、この長谷部・・・肝を冷やしました・・・」
肝をって、そんなに?!
長「加州から主が外にと聞いて、近侍も伴わずに何たることかと・・・主!これからは外へ出られる時にはこの長谷部をお側に!是非とも!」
『う、わぁっ?!』
ドン・・・という衝撃と同時に身動きが取れない状況で、それが抱き締められてると分かると頭の中がショートしそうになる。
『あ、あの、ちょっと長谷部さんっ?!』
もぞもぞと体を捩って長谷部さんの顔を見上げれば、その目に今にも溢れだしそうな涙と、仄かに漂う香り。
『お酒・・・臭い・・・』
加「そ。次郎太刀に絡まれて散々飲まされて、今に至るって感じ?長谷部ってそんなにお酒に強くないからさ~。それに、見ての通り泣き上戸ってヤツで酔いが回ると面倒臭いんだよね」
はぁ・・・と大きくため息を吐きながら、加州さんがプイッと横を向いてしまう。
それまでに見ていた長谷部さんのイメージとはかけ離れた姿に、私は思わず笑ってしまった。
だって、さっきまではあんなに堅物っぽかったのに、と。
