第2章 新しい生き方
『長谷部さん、私はもう・・・ひとりで勝手にどこか遠くへ行ったりしませんよ?っていうか、みなさんにお前なんて必要ないって言われない限りは、ずっとここにいます。みなさんと一緒に、ここで生きていくって決めたんですから』
一「主・・・」
勿論まだ、分からない事だらけなのも確かな事だけど。
さっき一期一振さんが言ってくれたように、少しずつみんなの事を分かればいい。
明日の事は分からない。
それは自分が経験した悲しい出来事ではあるけど、それでもこうして、自分が生きていた場所とは違う所で、私を必要としてくれる人がいる。
それだけでも、私はここにいる理由が出来たから。
そう考えながら一期一振さんを見れば、そんな私を見て彼はそっと頷いてくれる。
存在していた時代も、背負っていた気持ちもそれぞれあると言っていた一期一振さんも、他のみんなのように同じ気持ちを胸に抱えているんだと思う。
私は、自分の独特な知識の中でそれを手繰り寄せながら、広間で楽しそうに笑い合うみんなをゆっくりと見回した。
少しずつ、あの輪の中に入れたらいい。
『それより長谷部さん・・・そろそろ苦しいんですけど?』
ギュッと抱き締めたままの長谷部さんに言えば、なんの返事も返って来ず、思わず加州さんを見つめる。
加「あー・・・寝落ちてる。こりゃ、相当だな」
『えぇ?!・・・でも、こんなにも早く長谷部さんの素を見せて貰えたと思えば、良しって事でいいのかな・・・?』
加「ま、明日の朝になったらそれを本人に話してあげればいいんじゃない?多分、めちゃくちゃ慌てるだろうけどね」
・・・そうかも。
でも、それはそれでちょっと楽しいかも知れない。
とは言っても、まずはこの状況をなんとかしないとだけどね。
加「主、長谷部を運べそうな人を呼んで来たよ」
次「ほら長谷部。いつまでも主にくっ付いてんじゃないの!」
襟元を掴んでベリっと引き剥がした次郎太刀さんが、そのままズルズルと引き摺るようにして長谷部さんを運んで行く。
加「飲ませた張本人だから、いい人選でしょ?」
一「そうだね。でもちょっとあれは、可哀想な気もするけど」
フッと笑う加州さんに、私も一期一振さんも一緒に笑う。
ここへ来て初めての夜は、まだまだ長くなりそうだなと笑って、私は漸く腰を上げて広間へと戻った。