第2章 新しい生き方
『あ、加州さん』
加「ちょっとびっくりしたんだけど」
私の前にちょこんと座りながら、加州さんが言う。
『びっくり、ですか?』
加「そうそう。たまたま主の方を見たら、次郎太刀に絡まれてるからさ。で、どんだけ飲まされた?」
はぁ・・・とため息を吐きながら、加州さんがそっと次郎太刀さんの方を見ては、また私を見る。
『どれだけって言っても、この杯で並々2杯ですけど・・・』
加「え、それ本当?」
『まぁ、はい・・・初めて飲む物だったから、それが限界というか。何とかそれ以上はと、やんわり断りましたけど』
加「初めて飲むって・・・だからか・・・」
う~んと少し唸りながら私の顔をチラチラと見る加州さんを不思議に思いながら首を傾げると、加州さんはまたもため息を吐いた。
加「あのさ、顔が真っ赤になってるよ。もしかしてもう酔ってるんじゃない?」
『これが酔ってるかどうかは分かりませんけど、さっきから熱いなぁとは思ってました』
ペタペタと顔を触りつつ言えば、加州さんは少し外の空気でも吸ってきたら?と襖の方を見た。
『そうですね。長谷部さんに許可を貰ってから外に出てみます』
加「長谷部ならあっちで絡まれてるから伝えとくよ。それにそこの縁側なら不審者だっていないしね。一応ここ、本丸だし」
警備は万全って事なのかな?
『じゃあ、少しだけ席を外しますね』
加「あ、待って。俺も行くよ」
『大丈夫ですよ、すぐそこだから。加州さんも皆さんと楽しんでて下さい』
そう言って立ち上がり、フワフワとした感じにこれが酔うって事なんだと心で笑いながら私は静かに襖を開けて縁側へと出た。
『よいしょ、と』
襖を出てすぐに腰をおろせば穏やかな風が吹き、その心地良さに思わず目を閉じる。
そう言えばおじいちゃんもお酒を飲んだ後に、こうして外に出ては風に当たってたっけ。
大人っていろいろ大変なんだなぁ・・・なんて思っていると、縁側に付いていた手にふわりとした感触が擦り寄ってくる。
『あれ?キミはさっきの虎さん・・・ダメだよ勝手に出て来たら。長谷部さんに見つかったら、また怒られちゃうよ?』
その感触に視線を落とせば、さっきの虎さんがまるで猫のように体を擦り寄せてはまん丸の目にキラキラと月の光を反射させていた。
どうしてここに?と見れば、閉めたつもりの襖が少しだけ開いている。
