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〖 刀剣乱舞 〗 ~ 風に吹かれて~

第2章 新しい生き方


いずれにしても放って置くことは出来ないと、広間から出て、虎と話し出す主に声を掛けた。

「主・・・おひとりで外に出るとは、何かありましたか?」

『っ?!・・・びっくりした・・・』

「これは失礼致しました。五虎退の虎を追って来てみれば、主がおひとりだったので」

声をかけた途端に肩を跳ねさせる主にクスクスと笑い返して、そちらに行っても?ともうひとつ言葉をかける。

主が腰掛ける横には虎が機嫌よく伏せているから、少しだけ間を開けて腰を下ろす。

「こら。五虎退が心配するから勝手にいなくなったりしたらダメだよ?」

喉元を擽りながら言えば、五虎退・・・と言う名に反応したのか尻尾を揺らす。

『私がちゃんと襖を閉めなかったからだと思います。だから怒らないであげて下さいね?えっと・・・』

「あぁ、申し遅れました。私は一期一振・・・先程は弟が失礼致しました」

『一期一振・・・あぁ!あの粟田口の・・・』

私の名を聞いてすぐにそう言う主に、ご存知でしたかと笑いかける。

『そんなに詳しい訳ではないんですけど、いろいろとその辺の知識には訳ありなので』

「訳ありとは?」

尋ねてしまってから、主の少し恥ずかしげな顔に気付いてしまう。

「申し訳ありません・・・聞いてはならない事の様ですね」

『いえ、大丈夫です。ちょっと恥ずかしいなって思っただけなので。実は私、子供の頃に祖父が持っていた刀の資料で、とある刀に興味を持って。それから刀の事を自分で調べたりして・・・だから、ほんの少しの事ですけど、知っている事もあるんです・・・だからなのかなぁ、急にこんのすけに連れてこられて、審神者だの主だのって言われるのは』

星の瞬く空を見上げながら、主は小さく笑う。

「私達の主になるのは、難がおありですか?」

かつての主の中には、政府からのお達しとは言えどもここでの生活に馴染めずに気鬱になり、忽然と姿を消してしまった方もいた。

その問いに主は、自分はまだ来たばかりだから分からないと答えた。

『でも、明日から長谷部さんにいろいろとご指導頂くので、私には頑張るしかないんですけどね。早くお役に立てるように、頑張るしかないんです。私はここでしか、この先ずっと生きる道はないから』

そう言って笑って見せる主の顔が、どことなく悲しげで、何故だか胸が痛くなった。


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