第2章 新しい生き方
長「そもそもどうしてこの場に虎を連れて来ているんだ!」
五「うぅ・・・グスッ・・・ごめんなさい・・・」
・・・。
長谷部さんがそこまで怒るほど、私は驚いてないからと言おうとしても、怒り出して止まらなくなっている長谷部さんは、ずっと小さな子にお説教を続けている。
見た感じ、この虎さんはこの子にとても懐いているようだし・・・それに、この場にって言っても私をお披露目するからという集まりなんだから、そんなに怒らなくてもいいんじゃないかとも思うし。
『長谷部さん、ちょっと落ち着きましょう?』
さっきより少し大きめの声で名前を呼べば、長谷部さんはチラリと私を見て、その姿勢を正す。
長「主は黙っていて下さい。これは五虎退への、教育の一環でもありますから・・・いいか、五虎退。この虎たちがお前の大事な存在だというのは分かる。しかしながら今は・・・」
・・・長谷部さんて、1度スイッチが入ったら止まらないタイプなのだろうか。
あれだけ私を主と立てていながらも、五虎退さんへのお説教は止まらない。
・・・主?
そういえばさっきも、私がどう言っても主という事を全面に出しては、長谷部さんは丁寧な話し方をやめてくれる事はなかったよね?
主・・・あんまりこういうのって、使いたくはないけど。
仕方ない、かな?
よし、と小さく気合を入れて立ち上がり、しっかりと長谷部さんを見る。
『主である私が、もういいと言っているんです。それなのに、それが聞き入れられないと言うのですか?』
出来るだけ静かな口調で述べ伝えれば、長谷部さんはハッとして少しだけ目を見開いては、瞬きを繰り返した。
暫し、お互いに言葉を発することのないまま向き合う。
ヤバイ・・・自分で言っといてなんだけど、この緊張感ありありな時間で心臓が破裂しそう。
シ・・・ンと静まり返る広間に、その音が響いてしまうんじゃないかという位の鼓動で、首筋に冷りとした汗が流れて行く。
五「あ、あの・・・あるじさま・・・」
小虎を抱きしめたままの五虎退さんが不安そうな顔で私を見ながら立ち上がろうとするのを、大丈夫だからと振り返り、手でそっと制した。
長「主・・・」
長谷部さんが私を呼び、衣擦れの音と共にその体を折るように畳に座り深く頭を下げる。
長「主のお言葉を聞き入れられなかった事、大変申し訳ありませんでした」
