第2章 新しい生き方
長「・・・と言う訳で、この本丸にも漸く新たな主が・・・」
大広間へと案内されて、もうどれくらいの時間が経ったんだろう。
私をここまで連れて来てくれた長谷部さんの話が始まって随分と時間も過ぎたような・・・?
何気なく広間に集まっている人達を見渡せば、真剣な面持ちで長谷部さんの話を聞いている人もいれば、退屈そうに欠伸を噛み殺しているような人もいて。
まぁ、それも分かる気がする。
私だって校長先生の長ーい話を聞いている時は、同じようにしてたから。
けど、話が長すぎるよ長谷部さん・・・
ふぅ、と小さく息を吐きながら、そろそろ足の痺れも限界に達するからとこっそり手をついて足を座り直せば、その手の指先にふわふわと心地よい感触がスルリと寄り添って来る。
なんだろう、この癒される感触・・・
手元も見ずに二度、三度と撫でてから、そのふんわりとした形にそっと視線を落とす。
・・・猫?
にしては・・・少し大きいような気も・・・?
けど、こんのすけみたいに喋るキツネさんもいるんだから、少しくらい大きめな猫ちゃんがいたとしても不思議ではない。
『柔らかい・・・キミは誰かに飼われてるの?それとも、迷い猫さんかな?』
温もりが伝わるふわふわの頭を撫でながら小さく聞けば、キラキラと輝く大きな目を瞑りながら、ガゥ・・・と小さく声を出す。
・・・ガゥ?
・・・・・・・・・ガゥ?
ニャア、ではなく・・・ガゥ?
その鳴き声に、マジマジと顔を見てみれば。
見れば見るほど・・・自分が知っている猫の容姿とは違う姿形に硬直する。
え?
え・・・っ?
『と、虎っ?!』
まだ話が続いている長谷部さんの事も忘れて、驚きのあまり叫んでしまった。
長「主?!どうかされ・・・コイツは・・・五虎退!!」
五「はっ、はいっ!!」
長谷部さんが声を荒らげた先には、私のに今もグリグリと寄り添って来る小さな虎さんと同じような、ふわっふわな髪を揺らす男の子が直立不動な状態で固まっていた。
長「主が虎に驚いたじゃないか!普段からちゃんとしておくように何度も注意しているだろう!」
五「す、すみません・・・」
大きな声を出す長谷部さんに、うっすらと目を滲ませながらビクッと肩を震わす姿が、騒ぎを起こしてしまった自分のせいだと心が痛くなる。
『あ、あの長谷部さん?』