第2章 新しい生き方
長「こちらが大広間になります。中には既に、いま本丸に存在する者達を集めておきました」
加「集めておきました、とか言うけどさぁ。だいたいのヤツらはこんのすけから聞いた新しい主が気になるからって元々ここにいたじゃん」
長「コホン・・・加州」
またも小さな咳払いをしながら長谷部さんが言えば、加州さんはペロッと舌を見せながらもそっぽを向いてしまう。
そんなに、新しい主って言うのは気になるものなのかな?
『あの、加州さん?こんのすけから聞いてなかったんですけど、審神者・・・というか、ここの主ってのは頻繁に変わるものなんですか?』
加「あぁ、そっか・・・元々が人間である主たちはずっと長い時間ここで生活してるように感じるかもどけどさ?俺たちからしたら、その時間も人間が思うほど長くはないよ。あっという間にみんなじぃさんだったり、ばぁさんだったり。だから今度はどうなるんだろうって気になるんじゃない?」
あっという間におじいさんに、おばあさん?
そう聞いてしまうと、それこそ私みたいなのが務まるのだろうかと不安になる。
なるべくしてなった人達と比べたら、私はただ単に、ここ以外に行き場のない人間だから。
けど、そんな事を考えて躊躇してる場合でもない。
ここで生きて・・・いやもう既に魂となってはいるんだけども。
でも、それでも。
こんのすけという不思議な生き物や政府とやらから仰せつかった事を、自分で受けるって決めたんだから。
前に・・・進むしか、ない。
あれ、待って?
他の今までの主ってのは、時の流れ通りに年老いて行ったって事だよね?
そしたら私は?
ずっと今のこのままの姿でいるって事?
だってもう、生きてる訳じゃないんだから。
でも、安易にそれを2人に話す訳には行かないよね。
実は私は1回死んでるんでーす!なんて、胸張って言える事じゃないし。
こんのすけを見つけたら、いろいろと聞いてみよう。
長「主、開けますよ?」
『はい・・・お願いします』
不安が表に出てしまった顔をペチンとひとつ叩いて姿勢を正す。
もう、後には戻れない。
そう思いながら、スルスルと静かに開かれていく襖の向こうを見据えた。