第2章 新しい生き方
またも恭しく頭を下げつつ、長谷部さんが襖の向こうへと消えていく。
はぁ···とりあえず長谷部さんに着替えを見られる事は回避出来た。
あとは長谷部さんが戻って来るまでに身支度を終わらせてしまえば···ここまで考えて、はた、と気付く。
いま長谷部さん、もう一人連れて来るとか言ってなかった?!
もう一人って、誰?!
身支度ってそんなに大変なものなの?!
更に言えば、ここにいるのは私以外はみんな刀剣男士とかいう···え···ええっ?!
どうしてもお世話係だと張り切る長谷部さんは仕方がないとして!
それ以外の人に着替えの手伝いとか···ムリムリムリムリ···絶対ムリ!
長谷部さんが人を連れて来る前に、早く着替えてしまおう!
慌ただしく着ているものを脱ぎ捨て、用意されていた物を1枚ずつ手早く纏う。
えっと確かお母さんは···ここをこうやって、こうして···
うろ覚えな感覚で様々な紐を使って着付けていく。
ちゃんとした帯の結び方なんて分かんないけど、正装にって長谷部さんが言ってたし、とりあえずかわいく結んであれば···オッケーだよね。
うん、なんとか形になってる···これなら大丈夫でしょ!
危ない危ない···とほっと息をついたところに、襖の向こうから長谷部さんが私を呼ぶ声がした。
『長谷部さん、どうぞお入りください』
返事をすれば、スルスルと静かに襖が開けられ長谷部さんの姿が現れる。
長「身支度の手伝いが出来る者をお連れ···あの、主?その格好は···?」
私を正面から見た長谷部さんが、途端にギョッとした顔になりなぜか慌てて視線を外す。
『出来るだけ自分でって思って着てみたんですけど···なんか変ですか?あ、帯はちょっと結び方が分からなかったので、せめてなんとかしようとこんな感じにしてみたんですけど···』
ピラリと裾や帯端を捲って見せて、どうですか?とまた問いかける。
長「それは···ちょっと如何なものかと···」
項垂れる長谷部さんの隣に立つ人が、私を見て急に笑い出す。
「ちょっと···そんな格好で歩き回ったりしたら大変だよ?」
『そんなに変な格好ですか?えっと···』
加「あー、そっか。まだ名乗ってなかったね···俺は加州清光、よろしくね」
加州···清光···?!
それってもしかして、もしかしなくても?!
