第1章 はじまりの夜
「…………っ、やばっ!!メイク!!」
パチッと勢いのままに開けた両目と浮上した意識。
本能のまま飛び起きた。
けど。
「………あ、れ?」
いつもなら皮膚に張り付くような突っ張り感がない。
30も目前にしちゃうとさ。
化粧落とさず寝ちゃった翌日は必ずあるベタつき突っ張り、不快感。
それがない。
「なんでっ?」
顔を両手で包み込むように触れ、ベッドから出ようと足を動かした、瞬間。
「!?」
ぶつかったのは、何?
「………ぇ」
なんであたし、服着てないの?
待って。
ストップ!
落ち着かなきゃ。
うん。
落ち着いて、考えよう。
ベッドの上で、深呼吸。
真っ裸、ってことはこの際、とりあえず考えない。
いや、ダメでしょ。
問題そこだもん。
隣で気持ちよさそうに眠るあどけない寝顔の男の子を見た途端に。
記憶がプレイバック。
一気に血の気が引いた。
「…………」
どーしよう。
ああヤバい。
これは、あれだよね。
記憶ないし、言い逃れ出来ないし。