第4章 はじまりの音と雨の予感
嘘でしょ。
「間違いなく父親似だね」
「…………」
何が、『内緒』、だよ。
バカ湊っ。
そりゃ、潜り込むのも撮影許可とるのも簡単よね。
「凪、凪が何にこだわってるかはわかるけど、たぶんあの子にはそれ、関係ないと思うよ」
「え」
「何歳になってもさ、好きってだけで突っ走ってもいんだよ。」
「………」
「凪は考えすぎなの。後先のことなんて考えられないくらいに突っ走れるのは、若いからじゃないんじゃないの?」
「………それさ、あたしが湊を好きって前提で話してる?」
「違うの?」
「…………違わない、です」
「なら、問題ないじゃん」
いやいや、むしろ問題だらけ。
問題しかないんじゃないの?
―――――――――ザアァァァっ
「………雨」
窓の外からは、どしゃ降りの雨の音。
雨の粒が窓に当たって、一定のリズムを刻んでいるよう。
「梨花」
「ん?」
「ありがとう、梨花」
「―――――ん」
一瞬、驚いたように綺麗な長い睫毛が揺れて、梨花は美人特有の微笑ってやつをその顔に乗せた。
「いい顔になったじゃん、凪」
次付き合うなら結婚前提。
30前には結婚。
だから絶対、次付き合うなら、大人な人がいい。
あたしだけを見て、あたしだけを愛してくれる人。
同年代なんかじゃなくて、思い切り甘やかしてくれる人。
ずっと、思ってた。
だけどそれは。
『あたしが』好きにならなきゃいけないんだ。
求めてばかりで。
いつもいつも求めてばかりで。
『なーぎ』
『なぎ、好き』
うん。
あたしも。
あたしも湊が、好きだよ。