第4章 はじまりの音と雨の予感
「え?」
「だから、ごめん!」
じめじめとした雨が続いた合間に出来た爽快な洗濯日和。
気分もからっとしそうなそんな時。
「彼女のお腹の子供の父親は俺じゃなかった」
なんて。
すっかり忘れていたどうでもいい事実を今、聞かされている。
「ごめん、凪、やっぱり俺、凪が必要なんだよ」
「……………」
「な?やり直せるよな?俺たちの5年間はそう簡単にはなくならないだろ?」
人の気持ち、って、不思議なもので。
あたしなんでこんな人に5年間もしがみついてたんだろう。
あんなに大好きだと思って、結婚までも考えた目の前の男。
今はこんなにも、冷静に彼を見れる。
「あたし、あなたといても楽しくなかった」
「凪?」
「あたし、楽しい時は思い切り笑えるみたい」
『凪が楽しいのかわからなかった』のは、あたしたぶん、楽しくなかったんだと思う。
「あなたじゃあたしを笑わせられないでしょ?」
心から。
泣いたり笑ったり。
がむしゃらに恋をしたり。
「5年間も一緒にいたのに、気付けなかった」
たった2週間の方がずっとずっと価値があるって。
「なんで?凪お前今、若い男と付き合ってんだって?弟とか言ってても絶対嘘だってあいつ言ってた。お前遊ばれてるだけだって。絶対傷付くだけに決まってるよ」
「いいよ」
「え?」
「あんたといるよりずっといい」
喜怒哀楽のある恋愛のが、カッコ悪くてかっこいい。
傷付いたら、癒せばいい。
転んだら起きればいい。
ひどく会いたくて会いたくて仕方がなかったら。
「………みなと――――――――っ!!」
思い切り息を吸い込んで。
叫べばいい。
「湊―――――っ!!」