第4章 はじまりの音と雨の予感
「………え」
「あたしにはさ、湊がテレビなれしてるようにしか見えないね、これ」
「………」
「これ、3日前のやつ。たまたまアップされてたの見つけたのよ」
「…………そう」
今さら。
今さらどう足掻いたってどうなるわけでもないし。
彼はもう、世界が違う。
「それはさ、足掻いたやつだけが言えるんだよ凪。足掻こうともしないではじめから諦めてるやつは言う資格ないよ」
「梨花」
「あんたは今まで湊の何を見てきたの」
「何、を?」
「正体バレてはいさよなら、って、あのワンコがそんな聞き分けいいと思う?」
「ぇ」
「あいつは神経図太いし、年上に対する配慮も遠慮もないけど!!」
「あの、梨花?」
何、悪口ですか?
えっと?
「諦めも絶対悪いと思うのよ」
「……………」
湊。
あたし、湊のこと好き?
な、わけない。
だって8コも下だし。
だいたい湊といたの、2週間だけだし。
たった2週間で湊の何がわかるんだろう。
それだけで好きなんて、言えるの?
でも。
だけど。
たぶんあたし、湊は『必要』なんだ。
あたしには湊が、必要なんだ。
好きとか、そーゆー類いの気持ちかなんてまだよくわかんないけど。
湊といた2週間はあたし、楽しかった。
何をしても楽しかった。
そこに湊がいる、ってだけで。
あたしすごく楽しかった。
楽しかったよ。