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拾った恋は、18禁

第3章 いらない、朝


「湊」

「『あの日』もね、なぎなら絶対、声かけてくれるって思ってた」

「……」

「ほんとはね、『紅』、って、呼んでもらう気で。紅になったつもりで、なぎに会いに来たのに。」

『なんでかな、湊、って、名乗っちゃった』


そう、自嘲気味に笑う湊を抱きしめたいのに。
何でだろう。
体が動かない。



「すごくすごく、楽しくて。つい居着いちゃったね」
「湊?何いってんの?あんた図々しいんだから、もっと図太く居座るんでしょ」


消えるような笑顔、見せないで。
なんでそんな泣きそうな顔してんの。

「俺は紅じゃないから。なぎを好きになったのは、紅だから」
「だから何?今、あたしの目の前にいるのは、『湊』じゃん!」
「うん」
「湊」


「なぎ、好き」



『好き』。
そー言われて、こんなに胸がぎゅってなったの、始めてだよ。
切なくなったの、始めてだよ。


「なぎ」
「湊、海外ドラマ見るんでしょ?ビールあるよ、飲む?」
「………飲む」

わざとらしくキッチンへと足を運んで。
ビールを2つ、取り出す。

だけど。

「……好きになって、ごめんね」

「………っ」

嫌だ。
嫌だ。


「なぎ」


手に持っていたビールをやんわりと、キッチンへと置きながら。
湊はあたしをまっすぐに見下ろしてくる。

「5秒だけ、俺にちょーだい?」
「え」
「目、閉じて」
「湊?」
「いいからなぎ、お願い」
「……」


「うん、ありがとうなぎ」
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