第3章 いらない、朝
「…………」
自殺?
さっきテレビに出ていた彼が、もういない?
いつ?
なんで?
梨花に見せてもらった週刊誌には、人気絶頂、そう書いてあった。
『朝比奈 煌』、その名前で検索すれば、作品名がずらっと羅列するくらいには。
「なぎを見つけたのはね、紅なんだ」
「え」
「なぎは覚えてないよね。なぎはあいつの命の恩人なの」
「………」
「連日のハードスケジュールと極度の睡眠不足。確実に紅の体を蝕んでって」
真っ暗になったテレビの画面に視線をうつして、まるで真っ暗な闇の向こうに誰かを見てるような、そんな顔で、湊は食い入るように画面を見つめていた。
それが、ふいにあたしへとうつされると。
湊はいつもみたいなふにゃっとした笑顔で。
「苦しくて、息ができなくて。だけど道行く人たちは知らん顔で通り過ぎてくし。俺が『誰か』なんて関係ないんだよ」
「?」
「紅が言ってたの」
また、伏せた瞳を開くと。
湊は一気にその後を続けた。
『大丈夫?それ、喘息。発作おこしかけてる。あたしも持ってるからわかるよ。冷たいコーヒー飲める?カフェインとって、今すぐ病院行った方がいい』