第3章 いらない、朝
わくわくと瞳をおっきく輝かせていた瞳が。
一瞬にして、かわる。
ついでに。
さっきまであんなにピンと立っていた耳も、千切れんばかりに振っていたしっぽも。
今はもう、ない。
「……………これ、湊だよね」
キャストした画面を見ながら、さらに無表情に瞳を暗くする湊を、伺い見た。
テレビにうつしだされているのは、日本のテレビドラマ。
海外ドラマにしか興味なくて、全然気付かなかった。
だけどテレビの中で、さっそうと白衣を着こなし、オペをしてるのは間違いなく、湊だ。
「………俺じゃないよ、双子なんだ」
「湊」
「ほんとに、俺じゃないんだよ」
ピ、と。
リモコンで、テレビを強制終了する湊の手元に視線をうつす。
「これ、湊でしょ?雰囲気全然違うけど、顔も声も、そっくりじゃない」
「だから、違うんだよ!!」
びくん、て。
はじめて聞く湊の大声に、大袈裟にびくつく体。
「………ごめん」
小さくそう、哀しそうにあたしを見る湊に首を横にふった。
しばらく続く、沈黙。
先に沈黙に根をあげたのは、あたしじゃ、ない。
「………紅、は、双子の弟、なんだ」
「こう?」
「そう。湊→港→コウ、ってわけ。単純だよな、うちの両親」
「…………ほんとに、双子、なの?」
「だからそー言ってんじゃん」
「………ごめん」
「死んだんだ」
「え」
「紅、自殺したの」