第1章 はじまりの夜
駄目だ。
こーゆーの、絶対関わっちゃいけないやつ。
まず視点あってないもん。
焦点どっか違うとこみてるもん。
だいたい、雨、降ってないし。
「じゃ、頑張ってちょうだい」
見ないふりして、エントランスへと足を向ければ。
「ねぇ」
やっぱり!
ああ、声なんてかけるんじゃなかった。
だって不自然すぎるんだもん。
突っ込んで下さい感、満載だったんだもん!
そろり、と、段ボールくんへと向けた視線。
さっきまで宙をさ迷っていた視線は、今は完全にあたしへとロックオン。
「なんでもするから、拾ってかない?」
「―――――は?」
笑いもせずに、無表情で向けられた表情。
だけどそれは確かに、あたしへと向けられていた。
「お姉さんだけだよ、声かけてくれたの」
「え?」
「ずっとここにいて、声かけてくれたの、お姉さんが初めて」
「………」
こんなに不自然感、半端ないのに?
あり得ないくらいにおかしいでしょ、この子。
「たぶん俺、絶対お姉さんの役に立てるよ」
たぶんなのか、絶対なのか、どっちよ。
ってかいい加減、段ボール捨てなよ。
「なんの役に立つの?」
「………」
「キミ、あたしに何をしてくれんの」
「ご飯作ってあげる」
あ、コンビニ袋、見られた。
「掃除も洗濯も、出来るよ」
「あとは?」
「………慰めてあげる」