第2章 真っ昼間のにわか雨
「なぎーっ」
かき氷両手にパタパタと走る湊は。
たぶんお面なんてつけてなくても子供にしか見えないと思う。
「なんだかんだ言ってさ、けっこう楽しんでるよね、凪」
「え」
「湊。もう生活の一部になってんじゃない?」
「………」
「別にさ、成人してんだし、いいじゃん年の差なんて」
「駄目でしょ、犯罪だって」
「なんで、お互い大人なんだから。湊だって自分に責任もてるでしょ」
「でも湊は、これからまだまだ、将来あるもん」
「あたしたちにだってまだまだあるよ、将来」
「………そーだけど」
「さて、と」
「?」
路肩へとおろしていた腰を上げて、梨花が徐に立ち上がるのを視線だけで追いかければ。
「邪魔者は消えるわ、そろそろ」
「梨花っ?」
「あれ梨花さん、どっか行くの?」
「湊っ?」
絶妙なタイミングで、かき氷を両手に抱えた湊のご到着。
「いつから、いたの?」
「?今だよ?梨花さんかき氷は?」
「いらない。あんたにあげる」
「いいの?」
「うん、帰るね。凪よろしく」
「え、送るよ?」
「いらない。あんたに送ってもらわなくても帰れる」
ヒラヒラと片手を上げていなくなる梨花の背中は、すぐに人混みへと消えていく。
「梨花さんて、カッコいいね」
「あはは、そうだね。自由だよね」
「なぎ、イチゴとメロン、どっちがい?」
「あ、かき氷?えと、イチゴ」
「はい」
「………ありがと」
お面、邪魔だなぁ。
湊の笑顔、見たいのに。
「なぎ?」