第2章 真っ昼間のにわか雨
DNAうんぬんとやらは、所詮言い訳にしかならない。
「なぎってばへんなとこ、固いんだよなぁ」
なんてぶつくさふてくされるのは、湊が若いから。
大人の階段もそろそろ登りきってしまうあたしには、いつでも責任ってものがのしかかる。
前途ある湊の将来まで、崩してしまうわけにはいかないんだ。
「ねーなぎ、誰とお祭り行くの?」
「梨花」
「俺も行きたいっ」
「駄目」
「なんでっ?」
………そんな純粋に、疑問で返されちゃったら。
特に答えなんて用意してないし。
「……………」
「俺、ちゃんといい子できるよっ」
さっきは子供扱いすんな、とか怒ってなかった?
「なぎー」
「わかったわよ」
「いいの?」
「うるさいんだもん」
「やったー、なぎ大好きー、わーいっ」
「………」
ぴょんぴょん飛び跳ねる、明らかに子供にしか見えない湊へと知らずに預けた視線。
子供、だと思ってたのに。
力も表情も、完全に『男』そのもので。
しっかり中身は健全な男子、ってやつで。
掴まれた手首を、胸の前で無意識に握りしめた。
「……………なにそれ」
「………」
「かわいいでしょ?さっきお店で売ってたの」
「そう。さすが、相変わらず斜め上行くわね、あんた」
花火大会当日。
梨花との待ち合わせ場所につく前から並んでいた出店の数々。
うずうずと全てに目を輝かせて歩くこと、数分。
ついでにざわざわと道いく人たちがヒソヒソとなにやらこちらを注目始めた頃。
確かに湊のかわいさは目を引くものがあるから、仕方ない、けど。
けど。
食い入るように見つめた『お面』を買わされた挙げ句、それを着けて歩くことさらに数分。
興味の対象だった注目は、すでに違うものへと確実に変化していた。