第2章 真っ昼間のにわか雨
「俺、そんなに子供じゃないよ」
目の前には、あたしを見下ろす湊がいて、起き上がろうと力を入れても、両手は湊に縫い止められているようで、起き上がれない。
始めて、湊に押し倒された事実を頭が理解した。
「湊っ、離して」
「力じゃ俺のが上なんだよ、なぎ」
「湊っ」
「なぎの細い手首なんて、簡単に折れちゃうし、拘束するのなんて簡単だよ」
「離して、ってば」
あどけない笑顔でへらへらと笑っているはずの湊は、今は間違いなく雄の顔で。
瞳に宿る光は、頭が危険信号を鳴らすには十分すぎるくらい、鋭い。
「子供はどっちなのか、なぎに教えてあげようか?」
「…………っ」
1度知った蜜の味は、恐ろしく甘くて。
依存性が高い。
これが俗に言う相性とゆーものなら、DNAレベルで体が求める湊を、拒める理由なんて存在するのかな。
そこにベッドがあって。
男と女がいて。
お互いに求めあっているものを拒む理由の方が、ないと思う。
「…………」
だけど。
湊の唇があと数ミリ、触れそうになる1歩手前。
DNAレベルとやらに理性が勝利した。
「それ以上したら、追い出すから」
ピタリと湊の動きが止まり、顔を離して驚いたよう瞳を見開いたあと、湊は降参とばかりに両手を上げた。
「次はないからね、湊」
「はーい」
「………」
危うく流されそうになった。
あたし、そんなに欲求不満?
いや、問題そこじゃなくて。
1度目は過ちでも、2度目は自分の意志が存在する。
すなわち言い訳できない大義名分とやらが、そこには存在してしまうのだ。