第2章 真っ昼間のにわか雨
新入社員のこの子もたしか、22、くらいだったかしら。
湊と、同じくらい。
「そうなんですねー、峰岸さんの弟なら、カッコいいんだろーなぁ、いくつですか?」
「21」
「えー、わかーい」
きゃっきゃっ、きゃっきゃっと笑うこの子にも、湊は若いのか。
ならあたしには、やっぱり湊は弟が限界。
「どうしたんですか?」
「ううん」
くるくる巻いた茶色い髪の毛に、くるくるよく動くおっきな瞳。
肌のツヤもよくて、弾力なんてたぶん桁違いなんだろーな。
いつもならうざくて仕方なかった彼女が。
何故だろう。
眩しくて仕方ない。
「ええ?なぎ、なんで?どーしたの?本気?」
「いらないなら、いい」
「やだ、いる!ちょーだい」
定時上がりした、会社帰り。
たまたま立ち寄ったお店で、安売りしてた。
『寝袋』。
だって床で寝るよりは、体に負担がかからないでしょう?
「なぎはほんと、優しいね」
「風邪ひかれても、困るから」
「うん、わかってるよ」
やったー、なんて。
瞳を蘭々と輝かせる湊。
これはきっとそう、母性本能。
それともほんとに弟への姉弟愛?
うん、まぁ、なんにせよ。
湊の笑顔に癒されつつあるのは、確かだ。