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拾った恋は、18禁

第2章 真っ昼間のにわか雨


ちょっとちょっとぉっ?
30前の老体には、砂場での全力疾走なんて地獄なんだけどー?


帽子は取れそうだし。
右手は強引に前へ前へと引っ張ってくれちゃうし。
足はもつれそうだし。
何より、暑い。


「なぎ平気ー?」


だけど。


なんでかな。
繋がれた右手が、心地いい。
時々振り返る彼の笑顔が、心地いい。



うん。
たまには光合成するのも、悪くない。




「あはは、なぎ温室なんだからー」
「う、る、さいっ、20代の体力と一緒にしな、で」


膝へと両手をついて肩で呼吸するあたしを見下ろして、湊の笑い声は一向に止まる気配がない。


「なぎー、ねぇなぎ」
「?」

呼ばれたままに、膝に手をついたまま見上げれば。
ふ、と。
目の前に出来た影。
湊があたしに合わせて屈んだ、のを、視線だけで追った。

瞬、間。


「!?」


驚く間もなく、湊の唇が、重なったんだ。
そして。

「みな、とっ?」

「ごめん、なぎ、かわいかったからー」

悪びれもなく、彼は自分の唇をペロリと、舐めたのだ。


「な、な、な………っ」
「あはは、なぎ、真っ赤ー。もっとすごいことしたじゃん、俺たち」
「!!!」

飄々と笑う、笑い声。
風に乗って薫るのは、潮の香り。


あんまり悪びれもなく笑うから。
屈託もなく笑うから。
なんかもう、ほんと。
キスくらいたいしたことじゃないのかな、とか。
海外じゃ挨拶だし、とか。


そんなことを、考えちゃうんだ。

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