第2章 真っ昼間のにわか雨
「何がそんなに嫌なの?かわいい顔してるじゃん、彼」
「…………」
何が。
何が、なんて。
そんなの決まってる。
歳の差は、どう頑張ったところで、うめられない。
日々ジェネレーションギャップとやらに、苛まれているのだ。
「小学生」
「?」
「あたしが大学生活を華々しく送ってる間、この子、小学生だよ?」
「だから?」
「だから、って。ないでしょ、恋愛感情すら持たないって」
「そりゃ、大学生と小学生じゃね」
「でしょ」
「もう20歳越えてんだし、いいじゃん」
「他人事だし」
「他人事だもん」
あーあ、楽しそうな顔してくれちゃってさ。
ないから。
絶対。
梨花の想像してること、100%あり得ないから!
「な、ぎーっ早く早くっ」
例えばこんなところ。
「なんで?何その格好、およごうよー」
「無理」
炎天下の海。
人混み。
汚い海の水。
何より何より。
NO!紫外線!!
「なぎの水着見れないなら来た意味ないじゃん」
「勝手に連れてきたんでしょー?あたしはちゃんと断ったわよ!1秒だってこんなとこいれないっ」
「えー?じゃぁ、遊園地っ」
「却下」
「んー、水族館」
「人混み、嫌い」
「映画は?」
「眠くなる」
「なぎはいつもデート何してんのー?」
「え」
いつも。
『凪は好きなことないの?』
『行きたいとことか、ない?』
「あ……」
「なぎ?」
駄目。
思い出すな。
もうとっくに、終わったことなんだから。
『凪といても正直、楽しくなさそうで、しんどかった』
「………」
「なぎー、やっぱ帰ろっかー」
「え」
「のんびり家の中でテレビ見たい、俺」
「え?」
「海外ドラマ一緒に見よー?」
「………」
「なぎー、無理やり連れて来てごめん。顔上げてよー、ごめん、怒ってる?」
例えば、こんなとこ。
「なぎー」