第2章 真っ昼間のにわか雨
「梨花」
「やったー、ケーキだぁ」
玄関先で、梨花から白い箱を奪い取ろうとする湊から。
梨花はさっとケーキを移動させ。
「残念、あんたの分はないの。はじめまして、ワンコちゃん」
にっこりと微笑みながら、その箱をあたしへと渡す。
「俺に会いに来たくせに俺のねーのかよ、ひでぇ」
ぶつくさ言いながら。
それでも先にリビングへと赴き、彼は梨花に美味しい珈琲を入れるのだ。
ついでにあたしと、自分の分までも。
「なんだ、けっこう忠犬じゃないの」
「……梨花」
真顔で言われるとなんか違う気がするんだけど、それ。
「冗談よ。ちゃんとあるわよ?少年の分も」
「え?俺のもあんの?ラッキー」
梨花が言い終わる前に、湊はがさごそと箱を開け。
「はい梨花さん、モンブラン」
梨花に用意されたお皿へと、モンブランを置いていく。
ついでにあたしには、イチゴのショートケーキ。
自分は残ったチョコレートケーキを、手にとりそのまま口の中へと頬張った。
「なんで?」
「ん?」
「なんで梨花にモンブランあげたの?」
「だってなぎ、ショートケーキ好きじゃん」
「だけど、なんでモンブラン?」
「初対面の人にはモンブラン買ってこないもん。だいたい初対面の人にはチョコレートかショートケーキでしょ?」
「…………」
「モンブランも俺、好きだけどさ」
梨花の好きなモンブラン。
迷わず湊、梨花のお皿に乗せた。
「モンブラン買って来るのって、大抵自分が好きだからだよね」
ペロン、て。
指についたチョコレートを舐めながら、湊。