第2章 真っ昼間のにわか雨
あれから。
湊がうちにいついてからなんと、今日で10日ばかりたつ。
10日。
240時間。
やばい。
長すぎる。
絶対絶対、長すぎる。
「なぎー」
「………」
「なぎなぎなぎ、なーぎ」
なんかの動物の鳴き声かと思うくらいに、それは甘く、そしてうるさい。
ついでに重い。
真っ白のソファーへと座りながら瞑想すること数分、ついには全体重があたしの肩へと降りかかったのだ。
「重いっ、うるさいっ」
「休みでしょー?」
「休み」
「ねーねー、ゆっくりしよー?」
「してる」
「ベッドで」
「立ち入り禁止」
「俺だって健全な男の子だもーん、触れたいよー、なぎとちゅーしたいよー」
「いつでも出てってくれて構わないから」
「やだ」
何がだもーん、よ。
勝手に得意の武器でも使って他のおねーさまのどこでも行けばいいじゃない。
「なぎー」
「うるさい」
「違うよ、誰か来たよ」
「え」
見れば。
ドアフォンにうつしだされたのはよくよく知った顔。
ガチャンと、玄関を開ければ。
ケーキの箱をちらつかせ。
「噂の駄犬に会いに来たよー」
どこまでもマイペースな梨花さまの、ご登場である。