第1章 はじまりの夜
「俺出てったら鍵開けっ放しじゃん」
「あ」
「物騒じゃん」
「………そうね」
「真っ暗だし、怖かったー」
「ありがとう、もう帰って頂いて大丈夫よ」
「酷い、なぎ。俺の体弄ぶだけ弄んで、飽きたらポイなの?」
うっ………。
ヤバい、目眩する。
「あのー、さ、質問いい?」
「うん?」
「昨日、昨日は、あたし、きみと、その、ね?」
あーやだやだ。
なんでこんなこと聞かなきゃなんないの。
だいたいこれじゃ、あたしまるで加害者じゃん。
「ああ!!」
ポン、とわざとらしくグーを左の手のひらへと押し付けながら。
「なぎってば全然離してくれないんだもん」
なんて。軽々しく出てきた言葉たち。
卒倒しそうになりたい衝動をおさえ、あわてて彼の口を掌で塞いだ。
「誰も聞いてないって」
「そーゆー問題じゃないっ」
「なんでー?減るもんじゃないし、いいじゃん」
「良くないっ」
良くない。
絶対、良くない。
だめだ。
目眩するやっぱ。
「大丈夫?なぎ?」
『なぎは我慢しすぎだよ』
『もっともっと甘えなよ』
「え?」
「なぎ?」
湊が触れた途端に蘇った構図が、やばすぎて。
組みしかれた状態でしかあり得ない構図に、一気に体温急上昇。
「なぎ?」
「触んないで!!」
思い出せないってことは。
あたしの意識がが封印することを選んだわけで。
その封印は、解いちゃだめだ。