第3章 ひこうしきかいだん
バラバラと、蛇の目が音を立てる。
それでも六間*(ろっけん)先の信玄さまを見失うほどじゃない。
「…どこに行かれると思う?」
「さぁ?」
この前が湯治。
それより前にも、フラッとどこかに行ってはシレッと戻ってきてたしな。
「?…幸、あれ」
「あ?」
軒先で立ち往生してる誰かに話しかけてるな。……女か?
自分の傘に入れて……
あ、歩き出した。
「…………あ」
「?なんだよ佐助」
「…いや……分かった気がする」
「は?」
「一度戻ろう。心当たりを話すよ」
※注釈※
六間=約10m